従業員の健康増進を図り、生産性や企業価値を高める「健康経営」について、先進的に取り組む企業の事例を2回に分けて紹介しています。2回目は、若手中心に社内コミュニケーションを図ったり、お昼に手作りサラダを提供して野菜摂取を促したりとユニークな取り組みを行う3社をこ紹介します。
社員全体の意識高め、生産性向上へ
●ーロ目は野菜から

すべての社員に関わる「食」を通して、社員全体の健康意識を高める取り組みをしています。このうちの一つが、食事の際に野菜から食べる「ベジファースト」の呼ぴ掛け。野莱をとる大切さを理解してもらい、食べる順番で血糖値の上昇を抑えられることを知ってもらおうという取り組みです。7月からは月1回、希望者にサラダや野菜たっぷりの汁物を無料で提供する取り組みを始めました。前日までに希望をと りまとめ、社員が当日朝に地元産の季節の野菜を使って調理。30人以上の社員が利用しています。こうした取り組みを通して社員に健康についての知識を身に付けてもらいたいです。
[物流管理課 北澤啓一郎さん]
普段野菜を意識して取ることがあまりないので、会社で昼食に用意してもらえると大変助かります。また、野菜を最初に食べると満腹感がいつもより早く感じられ、結果的にご飯を食べる量が少なくなり摂取カロリーが減るので満腹防止につながっています。
●座りっぱなしの解消

現場では立ち作業が生産性向上などに役立ち、健康にも良いと言われていました。一方、事務職はずっと座っていますが、欧米でも事務職が立って仕事をしている国があることを知り、日本でもいち早く取り入れたいと考えました。机の高さが上下して立ったままでも仕事ができる「スタンディングデスク」を導入。作業によって立ったり座ったりを切り替えることで、意識することなく体を動かす機会が増えています。社内ではパランスボールも導入しており、組み合わせて使っている人もいます。
●禁煙チャレンジ

社長自身が病をきっかけに禁煙した経験もあり、健康への弊害が知られるたばこへの取り組みを始めました。たばこをやめたいが、踏ん切りが付かない社員を会社として後押ししようと、「禁煙チャレンジ社員」を募集。禁煙意欲を保っため、禁煙の記録表を掲示し、6カ月の禁煙に成功した人を社長が全社員の前で表彰する取り組みをしました。2019年6 月には会社敷地内での喫煙を終日禁止。社員は出張先や休憩時間を含めて禁煙とし、喫煙室は撤去しました。会社の全面禁煙開始と合わせ、禁煙外来の受診費用を2万円補助しました。

健康には積み重ねや習慣化が必要で、成果はすぐに見えません。ただ、健康の取り組みを企業文化として根付かせると、次に取り組む健康テーマが出てきます。それをさらに取り入れることで、社員に健康に取り組む会社だという意識付けができ、社員の生産性を上げ、付加価値を作り出す力も増してくると思います。健康になって後悔する人はいません。その点だけを捉えても、継続していくことが大切だと思います。 代表取締役社長
坂田匠さん
株式会社サカタ製作所 〒940-2403新潟県長岡市与板町本与板45番地
TEL: 0258-41-5266 FAX: 0258-72-0062
https://www.sakata-s.co.jp/ ■事業内容/公共産業用(非住宅向け)金属製折板屋根構成部品・ソーラーパネル取付金具・架台の設計、開発、製造、販売、施工指導
■設立/1973年1月24日
■従業員数/156人(2021年12月現在)
若手のアイデアで「楽しく健康」実践
●コミュニケーション促進の取り組み

4年前には働き方改革を目指し、組織横断の「Enjoy!Work Project」(EWP) を発足。入社5年以下の社員を中心に活動しています。取り組みの 一つが「あいさつ運動」。毎週水曜日の朝、若手社員2人が会社の入り口に立ち、出社する社員に「おはようございます」とあいさつ。テーブルに並べて紙コップとスティックのお茶やコーヒーを提供します。声を出すことで体も心もすっきり目覚めさせ、他部署の人とも交流を図る機会になっています。このほか、集中していると忘れがちになる休憩時間にみんなでお菓子を食べる試みも。年代や部署を超えたコミュニケーションが生まれています。

●ウオーキングで健康増進

ずっと座っていることが多くなりがちな仕事のため、脳の活性化や筋力向上などのためにも適度な運動が必要です。事業所を対象にした新潟市の「ウォーキングチャレンジ」に毎年春・秋ともに参加。社内でも高級肉などの豪華賞品を独自に用意し、個人やチーム対抗戦で歩数を競います。たくさん歩いた人だけでなく、ちょうど10刻みの順位の人も表彰するなど参加者が本気になれる仕掛けを用意するのがポイントです。
[ソリューション開発部
熊倉良希さん]
ウオーキングイベントは、みんなで歩こう、運動しようという活動になっています。通勤で歩くようにすると歩数は上がります。それまでは歩数を気にすることもありませんでしたが、楽しく競えるのもいいですね。
●リラックススペースの設置

社内では高さの違うさまざまなテ プルと椅子を配置。時にはソファーで、時には立ったままで、気分を変えて打ち合わせができます。一角には、自由につまめるお菓子スベースと、1杯50円で欽めるこだわりの本格コーヒーのコーナーも設置。バランスボールを椅子代わりにしたり、バズルを置いたりしたスペースもあり、自然と体や頭を使い、リラックスできる工夫をしています。こうした環境づくりが働きやすさにつながり、社員のメンタル面での健康にも関わってくると感じます。

健康に直結する取り組みだけでなく、フレックスタイム制やテレワーク勤務の導入、カジュアルな服装での勤務など若手の意見を取り入れたさまざまな制度があります。EWPは、若手にとっては、その世代ならではの視点や発想を生かせ、企画力やプレゼント力が磨ける場。新卒採用でも、こうした取り組みに対する学生の関心の高さを感じます。楽しく、継続できて、結果的に社内活性化が図られればと思います。
総務部門長
田中良太さん
オーエムネットワーク株式会社
〒950-0087新潟市中央区東大 2-1-18だいし海上ビル6F
TEL :025-250-5733 FAX: 025-250-0987
■事業内容/ソフトウェアや業務システムの設計・開発・運用サービス
■設立/2002年6月
■従業員数/47人(2022年10月現在)
できることから「あたりまえ」に挑戦

●歩数応援で6人の卒煙者
喫煙アンケートや禁煙の啓発に加え、本年度から本格的に卒煙を応援しました。卒煙したい人(卒煙チャレンジャー)と、卒煙を応援したい人(卒煙メイト)でチームを結成。応援メッセージと歩数対抗チャレンジを組み合わせて対抗戦で卒煙したい人を応援する方法です。ツールは社内チャットを利用しました。4チームが参加しましたが、挫折チームがなく、全員が卒煙・禁煙継続中です。この間、この取り組みとは別に卒煙した人も2人います。
[禁煙に成功した社員の声]
昨年5月より禁煙を開始し、9カ月が経過しました。過去に何度も、「明日から」「来年から」など理由を付けて禁煙を遠ざけていました。
会社からの勧めもあり、禁煙チャレンジに挑戦しました。禁煙にあたりチーム制で歩数を競い合いながら社内で禁煙をサポートしていただいて達成できました。
今後も禁煙を継続したいと思います。

●アクティブステップin高舘組と歩数対抗アプリ
5年前から社内の階段に消費カロリーと「平らな所より三倍の運動量」などのメッセージを掲示し、自然に運動意識が高まる作戦を立てました。本年度は県のウオーキング・健康アプリ「グッピ ーヘルスケア」の利用が社内で盛んになっています。新潟県やアプリ会社が主催する歩数対抗戦には可能な限り参加。ほぽ全員参加で人数の多いことが自慢です。最近は毎日歩く習慣がついて、週1回以上30分程度の運動習慣の ある人が70%を超えました。社内で歩数対抗をしていると「もう少し歩こう」「○○さん頑張っていてすごい」などコミュニケーションが増えました。
●健康経営×DX ~デジタルの活用~

「健康推進プロジェクトチーム」が、健康に関する課題を発掘し、その解決方法のアイデアを考え、実践しています。健康アプリの利用を促進し、社内チャットツールを活用して利用方法を説明する窓口も担っています。本年度の健康チャレンジでは、共有クラウドを活用することで、印刷や提出作業を省略し、社内の誰でも閲覧ができるよ うな工夫をしました。

安全保持、健康維持は建設業でも璽要なテーマ。健康経営に取り組む基盤はありました。

当社は「あたりまえ」を大切にしています。本年度は【あ】あるく【た】たべたら歯磨き【り】りょうしつな睡眠【ま】まいにち朝食【え】えがおであいさつ。「当たり前のことをやれることから、できることから、やってみよう」というスタンスで取り組んでいます。会社全体で実践していますが、個人のレベルを重要視。「無理しない、時に頑張る」の緩急を考えて押し付けないことを心掛けています。
代表取締役社長
高舘徹さん
株式会社高舘組
〒942-0004新潟県上越市西本町2丁目1番5号
TEL: 025-543-3425 FAX: 025-544-4564
https://www.takadategumi.co.jp
■事業内容/公共施設の請負工事・民間住宅の設計および施工・公共事業の請負工事
■設立/1954年3月
■従業員数/66人(2022年4月現在)