県民の健康づくりを応援する「にいがた健活フェス」が6月30日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開かれました。今回のテーマは「生活習慣病+食」。医師らが講師となった「にいがた健活講座」のほか、健康増進に役立つブースも出展し、来場者は健康寿命延伸のヒントを探りました。
にいがた健活講座①「楽しく学ぶ糖尿病予防と治療 ~歴史をひもとき未来へつなぐ~」
長岡中央綜合病院糖尿病センター長
八幡和明医師
やはた・かずあき 1979年、日本医科大卒。新潟大医学部第一内科(内分泌代謝班)を経て85年から長岡中央綜合病院内科に勤務。中央健診センター長、内科部長、副院長などを歴任する。現在は糖尿病の健診から臨床、患者教育とチームスタッフの育成に従事する。日本糖尿病協会理事、日本糖尿病学会功労評議員。
合併症予防に放置は禁物
糖尿病を現代病だと思っている人が多いようですが、実は昔からあります。紀元前1550年のエジプトのピラミッドから出たパピルスに、尿の量が多い病気があったと書かれていました。これが人類最初の糖尿病の起源です。その他に、古代の中国やトルコ、インドでも記録が残っています。
日本では約1千年前の平安時代。「源氏物語」の光源氏のモデルとされる藤原道長の病状について、「喉が渇いて水を多量に飲む」「目が見えなくなった」などと藤原実資が「小右記」という日記に記しています。これが2型糖尿病の合併症の世界最古の記述です。
増える患者 高齢者注意
糖尿病は3500年以上前からありましたが、原因は分かりませんでした。1869年、ドイツの医学生、ランゲルハンスは膵臓(すいぞう)に小さな謎の島があるとの論文を発表。1921年にはカナダのバンティングが(血糖を下げるホルモンである)インスリンを発見しました。「この発見により糖尿病は完治する病気になった」と言われました。しかし、今も患者は増え続けていて、現代の日本では糖尿病患者と予備軍が各1千万人いるとされます。加齢によってインスリン分泌の低下や運動ができなくなることから、高齢者に多い病気でもあります。
糖尿病を克服するためには、病気を理解することが大事です。食べ物を口にすると血管内に大量の糖分が入ってきます。膵臓にある細胞群「ランゲルハンス島」がインスリンを出すことで、その糖分が細胞内に取り込まれ使われます。しかし、インスリンの分泌が少なかったり、働きが悪かったりすると細胞内に糖分を取り込めず、血管内に糖があふれる。この高血糖状態が長く続く病気が糖尿病です。
最も多いのが2型糖尿病です。もともとインスリンの働きが弱いといった遺伝因子に、食べ過ぎや運動不足などの習慣を続ける環境因子が加わることで、インスリン分泌低下と効き目が悪くなるインスリン抵抗性が重なり、発症します。
環境因子は習慣と行動が大きな影響を招きます。自分の食生活マップを作ることで、自分の生活習慣が見えてきます。将来を考えて見直せば、その後の人生が変われるかもしれません。
糖尿病患者は喉が渇く、尿の量が多くなるといわれていますが、病状が進んだ人を含め大多数は症状が現れません。だから気付かず放置すると、だんだん血糖値が上がってしまいます。
高血糖の状態が続くと、手足がしびれる糖尿病神経障害や、目が不自由になる糖尿病網膜症、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症が出てきます。合併症を引き起こさないためにも、糖尿病を放置したり、治療を中断したりしないようにしてください。
糖尿病に負けないためには、今の状態を知ることも大切です。体重や血圧を毎日測り、血糖の平均値であるHbA1cの過去3回分の推移が分かるようにしましょう。「糖尿病連携手帳」を使うと便利です。
食事、運動、薬が治療の柱
治療の基本は食事で、次に運動。足りないところは薬を使います。食事と運動に気を付けず、薬だけで良くするのは難しい。食事は、1日3食、バランスよく食べ、適量を守ることを心掛けてください。これだけで十分良くなります。運動は姿勢正しく、元気よく、早足で歩くことがお勧めです。いつもより10分余計に歩くだけで1千歩プラスになり、立派な運動療法になります。
糖尿病は生活習慣を見直せば進行を遅らせ、予防することができます。新潟県健康づくり財団ホームページの「知っておきたい『糖尿病』」を参照してください。
参加者の声
糖尿病の予防のため、具体的に実践できそうなことが分かり、とても勉強になりました。自分の将来に向け、ストレスにならない程度に運動に取り組んでいきたいと思います。(20代女性)
具体的なお話で大変、分かりやすかったです。食事が第一と考え、生活していきたいです。(60代女性)
にいがた健活講座②「先人から学ぶ糀の魅力 ~手作り発酵食のススメ~」
山﨑糀屋代表取締役会長
山﨑京子さん
やまざき・きょうこ 1945年、阿賀町(旧津川町)出身。69年、明治元年創業の「山﨑糀屋」に嫁ぐ。オリジナルの「黄糀」を使い、伝統的な製法でつくる味噌や甘酒、「生黄糀」などには、多くのファンがいる。「糀コンシェルジュ」として、伝統食である糀の魅力を県内外に発信し続ける。著書に「女将が伝える糀生活 糀入門」(新潟日報メディアネット)。
糀菌は日本の菌であり「国菌」。黒酢の菌である当店の「黄糀」は、県産こしいぶきに菌を混ぜて作っています。糀1㌘に乳酸菌が1億7千万個、酵母が4千万個入っています。新潟は「コメの国」ですから、糀でいろいろなものを作ってほしいです。
昔から糀で作っているものといえばみそです。昔は各家庭とも、家族総出でみそを仕込んでいました。1日3食のおみそ汁はもちろん、漬物にも使っていました。今は家庭で仕込むことも少なくなり、子どもがみそを食べる機会は減っています。
一方で、おみそ汁の塩分を気にする人もいます。そういう方は、ホウレンソウなど、塩分を排出する作用があるカリウムの多い野菜を入れてください。手作りのみそは、やっぱり違います。手作りみそ作りの講座は、「食育・花育センター」(新潟市中央区)など、いろいろな場所でやっています。
伝統食で農業を元気に
今、糀屋が姿を消しつつあります。何とかしなければいけません。そのためには、おコメの需要を増やさなければいけない。おコメと一緒なら、みそや漬物など日本の伝統的なものが食べられます。要するに、おばあちゃんたちの昔の食べ物です。それと、好きなものを組み合わせて食べてください。
やはり、日本の農業を大事にしなければいけません。現在は、食料自給率が40%にもいかず、輸入品ばかり。今は何があるか分からない時代ですから、もっと自給率を上げる必要があります。自国の食料を大事にしましょう。そうすれば、日本の農業が元気になりますよ。
私は来年80歳になりますが、74歳までスキー大回転の選手としてマスターズに出ていました。みそを食べているので、骨が丈夫なんです。みそには、筋肉が細くなるのを抑える効果に加え、豆みそには骨粗しょう症の原因となる骨吸収を抑える作用があるという報告もあります。また、血圧を下げて、中性脂肪の蓄積を抑制する効果があるともいわれています。
漬物も体に良い。昔の漬物は、日がたつと酸っぱくなったでしょ。それが乳酸菌の一つ、短鎖脂肪酸によるものなんです。今の時期なら梅干しも最高です。梅干しにも短鎖脂肪酸が含まれています。これも先人の知恵です。次の世代に教えてあげないと、孫たちがかわいそう。日本の伝統食を好きになるように、それがどれだけ体にいいか伝えてほしいです。
糀水活用し熱中症予防
これからの季節は「糀水」がお勧めです。糀100㌘をだし用パックに入れます。それをポットやピッチャーに入れ、水500㏄を注ぎ、冷蔵庫で約8時間寝かせれば完成です。
これを1日コップ半分~1杯を目安に、水の代わりに飲めば、熱中症予防につながります。3日以内に飲み切るようにしてください。同じ糀から3回作れます。糀水を作った後の糀は、冷凍しておけば、菌が寝たままだから発酵しません。まとめて水に入れて加熱すれば甘酒になります。お客さまから教えてもらった活用方法ですが、試してみてください。
参加者の声
糀の活用、効能など知らないことがたくさんあり、楽しみに来ました。家族一同、暑い夏を元気で過ごせるよう、糀水を作ってみます。(70代女性)
さまざまな菌が腸に住み着き、身体の内側から健康と美がかなえられることに感動しました。良質な食について考え直すきっかけとなりました。(30代女性)
※参加者の声はアンケートから抜粋、一部要約しています。
「健活ブース」にぎわう
みなと広場では、メディアシップの健康サービス「ケンシェルジュ」の体組成計測定や、県栄養士会の管理栄養士による栄養相談、クレイ(泥)パックを施した足裏マッサージなどのブースが並びました。来場者は体に優しい和食や、食物繊維豊富なドライフルーツなどを買い求め、食と健康について考えました。
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