にいがた健活講座「心身を休める正しい睡眠」
国立病院機構西新潟中央病院
大平徹郎院長
おおだいら てつろう 1960年、新潟市(旧巻町)出身。新潟大学医学部卒。同大学大学院博士課程修了。同大学病院、新潟市民病院勤務などを経て99年、西新潟中央病院に着任。2019年から現職。専門は呼吸器内科、睡眠医療。NPO法人「新潟睡眠障害を考える会」理事長も務める。
睡眠時間に鉄則なし
活動量や季節で変化
いつまでも健やかに暮らすためのヒントを探る「にいがた健活講座」が1月29日、新潟日報メディアシップ(新潟市中央区)で開かれました。国立病院機構西新潟中央病院の大平徹郎院長が、睡眠時間の目安や睡眠の質を向上させるポイントなどを紹介しました。
よく何時間眠ればいいのか聞かれますが、医学的な鉄則はありません。ただ、名古屋地区の40歳以上、約10万人を調べた論文によると、睡眠時間が7時間ほどの人の死亡リスクが一番低く、海外でも同様の結果が出ています。実は、高血圧や糖尿病、うつ病のリスクが低い睡眠時間も6~8時間なので、一つの目安にすると良いでしょう。
睡眠時間は人それぞれ。季節などによって変わります。日中の眠気で困らなければOK。活動量にもよるので、運動習慣を付けることも大切です。
起床時刻を一定に
光で体内時計調整
人間の細胞には25時間周期の体内時計があります。そのため、24時間周期の地球の自転との間で「折り合い」をつけて生きていく宿命にあります。
大事なのは、寝る時刻より「起きる時刻」。起床時刻を一定にし、光を浴び、体内時計を調整することで、昼間起きて夜寝るというリズムが出来上がります。朝7時に起きるなら、睡眠時間を約7時間として逆算すると、夜中12時頃に寝ればいい。あまりこだわらず、大ざっぱにプランを作ることがポイントです。
また、日光の明るさは室内光の10~100倍。冬でもカーテンを開け、日光を浴びながら朝飯を食べましょう。体温が上がり、活動モードになります。
昼寝をするなら午後3時までに、長くても30分以内にしてください。長すぎると体内時計が乱れます。
その他にも、入浴は寝る1時間前までに済ませる、眠くなってから布団に入るなどを心掛けます。寝る前はスマホなどの「光」は禁物。寝酒は避けることなどでも睡眠の質が上がります。
無呼吸には要注意
減量や横向き寝を
また、中高年の睡眠の質を低下させる原因の一つに「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。
睡眠中の大きないびきや繰り返す無呼吸のほか、何時間寝ても熟睡感がなかったり、眠気のために仕事などに支障が出たりといった症状に心当たりがあればSASの可能性があります。メタボ体型やあごが小さい人もなりやすいです。
息が止まると、人間の体は無意識にほんの一瞬、目を覚まします。目覚めることで瞬間的に気道が広がり、呼吸が再開します。ところが、また眠りに入ると息が止まります。これを繰り返します。本人はあまり気付きませんが、何度も起こされている状態なので眠りが浅い。でも、一瞬目が覚めないと窒息してしまうので、命を守るためにそうせざるを得ないのです。重症になると、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の発生率が高まるので要注意です。
日常生活での対処法は、太り気味の人は体重を3%ずつ減らしましょう。体重70キロなら1、2カ月かけて2キロ減らすことを目標にします。横向き寝は仰向け寝より喉が狭くなりにくく、無呼吸が軽くなります。抱き枕の活用がお勧めです。アレルギー性鼻炎などで鼻の通りが悪いと、眠りが浅くなります。幼少期からの慢性的な鼻詰まりがある人は無自覚な場合も。耳鼻科の受診も有効です。
睡眠時間が短めでも、午前10~11時頃に眠気が無ければ心配いりません。睡眠時間が短いから不眠症というわけではありません。大切なのは、昼間の起きている時間を生き生きと活動的に過ごすことです。これらのことを日々の生活の中で生かし、より良い睡眠、休息を取ってください。
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