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にいがた市民大学2021認知症とともに〜安心して暮らせる社会づくり〜Vol.3 認知症の在宅医療

 認知症をはじめさまざまな症状が現われても、本人らしい暮らしを実現する在宅医療の在り方について、たかせクリニック(東京)理事長の髙瀬義昌さんが解説した。

 

たかせクリニック理事長

髙瀬 義昌さん


たかせ・よしまさ 1956年、兵庫県生まれ。東京医科大大学院修了。2004年東京・大田区に在宅医療を中心とした「たかせクリニック」を開業。厚生労働省の高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成ワーキンググループ構成員などを務める。




 

地域で連携し、暮らし支える


 たかせクリニックは東京・大田区で2番目の在宅療養支援診療所として2004年に開設した。患者は500人を超え、平均年齢は87歳。身体機能の低下に加え、命に関わる疾患を二つ以上併存していることも少なくなく、治療の優先順位を立てることが大切になっている。認知機能の低下は高齢者にはよくあるが、せん妄や、高齢で発症した精神疾患など認知症に症状が似たものも多く、地域でチームをつくり、サポートしていくことが求められる。

 2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとされる。ただ、単身の高齢者や高齢者だけの世帯は増え、自分の病気を認めず、病院に行きたがらない人もいる。患者を病院で待つのではなく、訪問診療で医療側から手を伸ばすことで認知症患者の発見と早期対応ができる。

 訪問診療では患者の普段の様子が見られ、本人の言動に惑わされずに正しく診断できる。患者の行動を変えたり、薬の調整で症状が改善したりすることもある。医師が見守ってくれている安心感は患者と家族に心の支えになっている。


重要な地域包括ケア


 21世紀は「高齢化の世紀」。高齢者は都市部を中心に増加する。そうした中でいわれているのが、地域で最期まで自分らしい暮らしができるよう住まいを中心に医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築=図参照=だ。

 中でも在宅医療への期待は大きく、〝旅立ち〟に向けて多様な終末期の過ごし方をサポートするのがミッションだ。「よくある病気」を生活の場で早く見つけて治療につなげる。在宅医には地域の介護者らとのネットワークや問題解決の能力、迅速に対応するフットワークなども求められる。


在宅医が担う役割は


 そもそも認知症は認知機能が後天的な脳の障害で持続的に低下し、日常・社会生活に支障が出るようになった状態(症状)だ。原因となる病気は70種類以上。硬膜下血腫など、早く見つければ治る認知症もある。一方、アルツハイマー型やレビー小体型など根本治療ができないタイプもある。それぞれ適した治療・ケアに導くことが重要になる。

 高齢者は認知症や薬によるせん妄、脱水などから転倒骨折して入院し、認知症が悪化する負のスパイラルが起きることがある。

 ポリファーマシー(多剤併用)も課題だ。高齢者は薬の副作用でパーキンソン病や認知症のような症状が出ているにも関わらず、次々と診療科にかかって薬が増え、さらに症状が悪化することがある。処方内容の適正化は医療者の重要な仕事で、地域の循環器科や整形外科、歯科などとの連携がより大切になっている。患者にも家族にも地域や国にとっても、良いケアの在り方を地域ぐるみで考えていくことが必要だ。


 







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