明日野家が聞く・健活インタビュー「心房細動」
- ma-hara3
- 6月25日
- 読了時間: 5分
更新日:6月27日
ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはずです。
脈の間隔 不規則か確認を 予兆なし

人間の体で最も大切な器官である心臓。働きが悪くなると命に直結する臓器で、今回は不整脈が生じる「心房細動」について、上越総合病院循環器内科の正印航部長に聞きました。

しょういん・わたる 2010年、新潟大学医学部医
学科卒、19年、信州大学大学院医学系研究科医学系専攻博士課程卒。上越総合病院循環器内科、信州大学付属病院臨床検査部診療助教などを経て、22年4月に上越総合病院循環器内科医長、25年4月から現職。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医。
―「心房細動」とは、どんな病気ですか?

心臓は上下左右、4つの部屋に分かれていて、上半分の部屋を心房と言います。通常1分間に約60~100回、規則正しく収縮する心房が、けいれんしたような動きになり、脈がバラバラになる不整脈が「心房細動」です。数日以内に止まる発作性、1週間以上続く持続性、1年以上続く長期持続性、治療を行っても停止不可能な永続性に分けられます。
脈が早くなったり遅くなったり、不規則になることで、動悸(どうき)や息切れなどを感じることがあります。通常より心臓の機能が落ちるため、心不全の症状が出る人もいます。しかし、全員に自覚症状が出るわけではなく、4割程度は無症状です。
また、血流が滞るので心房内に血の塊(血栓)ができやすくなり、それがはがれて血流に乗って全身に回ると、詰まった場所に応じて症状を引き起こします。特に問題になるのが、脳梗塞です。脳梗塞全体の2~3割が心臓でできた血栓による心原性脳塞栓症で、大きな血栓が血管の根元に詰まるため、他の脳梗塞と比べて広範囲の脳がダメージを受け、大きな後遺症が残るなど予後に影響します。
―発症しやすい人の特徴はありますか?
男性に多く、年齢が高くなるほど発症リスクが増えます。日本人の有病率は70代男性で約3%、80代以上で4%以上です。
高血圧や糖尿病、高尿酸血症、肥満の人は、より発症リスクが高まります。睡眠時無呼吸症候群の人は、一時的に呼吸が止まることで心臓に負荷がかかり、不整脈が出やすいことが分かっています。喫煙と飲酒も影響します。
―受診の目安は?

検診で心電図検査を受けましょう。ただし、初期の発作性の段階で、十数秒程度の検査の間に不整脈が出ることはまれです。ここで見つかる人は、ある程度進行している可能性があります。自覚症状がない人も多いので、検診だけで見つけるのは難しいです。
早期発見のために、定期的に自分で脈を測る「検脈」を習慣づけましょう。
一般的には手首で測ります。親指側の骨と筋の間、くぼんだところに反対の手の人差し指、中指、薬指の3本を当てます。脈が触れるまで強く押さえてください。強過ぎると血管をつぶしてしまい脈が触れなくなるし、弱過ぎると触れないので、調整しながら行ってください。心房細動は規則的ではなく、一拍、一拍がバラバラの状態で出るので気付きます。脈拍も測れる家庭用の血圧計やスマートウオッチなどを活用すると、早い段階で見つけられる可能性が高まります。
不整脈が見つかったら、かかりつけ医に相談しましょう。動悸がひどい時は、速やかに救急外来を受診してください。

―治療方法はありますか?
血液検査や心臓超音波検査などを行い、心臓機能の状態や他の病気による不整脈の可能性などを調べ、診断します。
心房細動の治療で最も重要なのは脳梗塞を起こさないようにすること。生活習慣病の有無や年齢などから脳梗塞の発症リスクを評価し、リスクが高い人は、脳梗塞予防として血液をサラサラにする抗凝固薬を服用します。その上で、全身の状態や心臓の機能などを総合的にみて、脈拍を整える抗不整脈薬による薬物治療か、カテーテル治療かを決めます。
カテーテル治療では、脚の付け根の血管から細長い管のカテーテルを心臓まで入れ、不整脈の原因となっている部分を焼いて治療する手術(カテーテルアブレーション)をします。カテーテルは、ここ十数年でものすごく進歩していて、安全性や成功率が向上しています。発作性の時点で治療することで、8割の人で心房細動が出なくなりますが、持続期間が長くなると有効性が落ちるため、より良い結果を得るには早い段階で診断をつけることが大切です。
当院では、循環器内科にアブレーション外来を開設し、不整脈の治療方針の相談を受けたり、治療後の経過を診たりしています。

-予防はできますか?
今のところ、特定の薬を飲めば出ないというものはありません。生活習慣病を防ぐなど、健康的な生活を送ることが大事です。
心房細動は高齢者に多い病気で、認知症の発生リスクも高いです。認知症や心不全、脳梗塞は起こってしまうと、本人だけの問題ではなく、支える家族の社会生活も大きく制限されます。早期の予防や発見に努めていかないと、今後、高齢化が進む日本の中で大きな問題になることが予想されます。
早く病気を見つけるために、定期的に検診を受け、検脈を習慣化し、違和感があれば早めに医療機関を受診してほしいです。
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