ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはず。
免疫低下が招くウイルスの再活性
最近、帯状疱疹が増えているとよく聞きます。小さい頃にかかった病気が関係し、働き盛りも要注意というけれど、一体どんな疾患なのでしょう。のぶ皮膚科(新潟市北区)の佐藤信之院長に詳しく聞きました。(明日野康子)
さとう・のぶゆき 1995年新潟大学医学部卒業。2001年新潟大学医歯学総合研究科修了、医学部皮膚科助手。03年米国オハイオ州クリーブランドクリニック留学。06年新潟大学医学部皮膚科助教。11年から「のぶ皮膚科」院長
「帯状疱疹(ほうしん)とはどんな病気ですか?
水ぼうそう(水痘)と同じウイルスによって引き起こされる病気です。このウイルスは初めて感染すると水ぼうそうを発症しますが、治った後も神経節という神経細胞が集まる場所に潜みます。普段は細胞性免疫の働きで抑えられていますが、加齢や、がんや糖尿病といった病気、免疫を下げる薬の使用などで免疫機能が低下すると、再び活動を始め(再活性化)、帯状疱疹を発症します。神経節から感覚神経を伝わって皮膚に出るので痛みやかゆみを伴い、表皮で増殖したウイルスにより赤い発疹や水膨れが広がっていきます。ピリピリした痛みや腰痛、筋肉痛のような感じといった前駆痛があった数日後、発疹が出て、体の左右どちらかに帯状に広がるのが特徴です。上半身に出ることが多く、胸から腹が約3割、頭や顔が約2割です。下半身だと座骨神経に沿ってお尻から足の指先まで出ます。
潜伏したウイルスの再活性化なので、帯状疱疹として他人にうつることはありません。水ぼうそうにかかった人は抗体があり、日本人では15歳以上の9割以上が持っています。ただ、水ぼうそうにかかっていない人には、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。
かかる人が多い年代など世代的な特徴はありますか。
加齢とともに免疫機能は低下するため、寿命が延びたことで発症する高齢者の割合は増えています。発症者数は60~70代が多く、80代では約3割がかかっています。ただ、20~40代の発症も増えています。2014年から小児への水痘ワクチンの定期接種が導入されましたが、水ぼうそうにかかる子どもが減少したことで、子育て世代にとっては水ぼうそうウイルスと接することで得られる追加免疫効果がなくなり、帯状疱疹の患者が増えているとみられます。
合併症や後遺症はありますか。繰り返しかかることもあるのでしょうか。
後遺症では、皮膚症状が治った後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」があります。10年くらい症状が続く人もいて、高齢になるほど移行しやすいです。合併症では、耳にできると顔面神経まひ、めまい、難聴などが起こる「ラムゼイ・ハント症候群」、目や鼻周辺だと角膜炎などが起きて視力障害が出ることもあります。
帯状疱疹に複数回かかることもあります。50歳以上で帯状疱疹を発症した人の約2割がPHNになると言われており、早期治療が移行減少に有効です。左右片側だけに痛みが出たり、痛みやかゆみと一緒に赤みや水疱が出てきたりしたら、早めにかかりつけ医や皮膚科を受診しましょう。
治療方法はどんなものがありますか。
ウイルスの増殖を抑える内服薬が主体です。発疹が広範囲で痛みや倦怠(けんたい)感などがある重症者は、入院し点滴治療します。痛みがあれば鎮痛薬を併用します。痛みがひどいPHNには、神経ブロック注射を施すこともあります。
予防方法はありますか。
免疫力を下げないように、睡眠、食事をしっかりとり、規則正しい生活を心掛けましょう。
50歳以上はワクチン接種もお勧めです。弱毒化したウイルスを用いる生ワクチン(水痘ワクチン)と、ウイルスの成分を利用した不活化ワクチンの2種類あり、どちらもウイルスに対する免疫力を高める効果が得られます。予防ワクチンは、帯状疱疹の発症減少に加え、発症した際の重症化予防、PHNに移行しにくいといった効果も期待できます。最近では、帯状疱疹にかかると、その後の脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めるというデータもあります。帯状疱疹になったことのある人も含め、予防のため、ワクチン接種をご検討ください。
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