ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはずです。
関節で生じる痛みや腫れ、変形
30~50歳代の女性によくみられるという「関節リウマチ」。痛みや腫れ、こわばりなどの症状を放置すると、寝たきりになる可能性もあるそう。治療や予防について、県立リウマチセンターの伊藤 聡院長に聞きました。
(明日野 康子)
いとう・さとし 1985年、新潟大学医学部卒。アメリカやドイツなどに留学し、筑波大学で講師、同大学院で准教授を務める。2010年から新潟県立リウマチセンターに赴任。診療部長、副院長を経て2024年から現職。
女性に多いというんだだけど、どういう人がなりやすいのかしら?
体内に入った細菌などの外敵を攻撃しする免疫システムに異常が起き、自分の体の一部を攻撃する疾患を「自己免疫疾患」と言います。関節リウマチはその1つで、主に関節を攻撃し炎症を起こす病気です。痛みや腫れ、こわばりなどの症状に加え、進行すると関節が破壊され、最終的には寝たきりになってしまいます。人口の高齢化に伴い、70代や80代での発症も増えています。
リスクファクター(危険因子)は、喫煙と歯周病です。関節リウマチの分類基準ポイントに「抗環状シトルリン化ペプチド抗体=抗CCP抗体」があり、この数値が高いと、現在関節リウマチであるか、将来発症する可能性が非常に高いです。喫煙者は肺胞マクロファージが、歯周病の人は歯周病原細菌が抗CCP抗体を作るため、発症しやすいです。
関節リウマチは遺伝病ではありませんが、家族にリウマチや膠原(こうげん)病の人がいるとなりやすいです。
どんな症状が出たら受診すればいいの。
初期症状として、関節の痛みや腫れ、朝、手が握りづらいなどのこわばりが出ます。手だけでなく足の指など、どの関節でも起きます。痛みと腫れが続くなら、整形外科やリウマチ科、かかりつけ医を受診してください。
血液検査やレントゲン、関節リウマチ分類基準などを基に診断します。抗CCP抗体やリウマトイド因子(RF)の反応が出ない場合もあるため、関節エコーで関節の内面を覆う滑膜の炎症の有無などを見ます。
どんな治療をすればいいんでしょう。
治療は、アンカードラッグ(中心になる薬剤)のメトトレキサートをはじめとする抗リウマチ薬を内服します。しかしメトトレキサートは、高齢者や肝機能・腎機能が悪い人は副作用が出やすいので要注意です。生物学的製剤は高額ですが使用を中止できる方もいらっしゃるので、半年間だけ生物学的製剤を使い、症状が安定したら安い薬に切り替えるという治療も可能です。また、JAK阻害薬を含む抗リウマチ薬は帯状疱疹(ほうしん)を起こしやすいため、ワクチンの接種を勧めています。関節リウマチの方は、生ワクチンを使用できないため乾燥組み換え帯状疱疹ワクチンを使用しますが、2回で4万円以上と高額なため、自治体に接種費用の助成を呼び掛けています。すでに助成が始まった自治体もいくつかあります。
関節の変形を修復する手術療法やリハビリテーションもあります。
治療方法の進歩により、関節破壊を抑え痛みもなく生活できるので、仕事はもちろん、妊娠・出産も問題なくできるようになりました。
予防ってできるのかしら? 症状が出ないように気を付けることがあれば教えてください。
たばこを吸わない、歯周病にならないことを心掛けてください。関節リウマチは、飲み薬や注射を続けながら症状がほぼない「寛解」にはなりますが、「完治」はしません。現段階で治療をやめることは、ほぼ厳しいです。疑わしい症状があれば、早めに受診をしましょう。火事と一緒で、火が小さいうちはすぐに消せますが、大火になると難しい-。早期治療がポイントです。
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