ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはず。
梅雨時に気を付けたい食中毒。
暑くなってきて、パパや歩のお弁当が傷まないか気を使います。これからの季節に向けて心配な食中毒について、新潟市急患診療センター長の山添優先生に聞きました。
(明日野康子)
やまぞえ・まさる
1949年、新潟市西蒲区出身。新潟大学医学部卒業。新潟大学助教授、新潟市民病院救命救急センター副センター長、同病院副院長などを経て2015年から現職。
食中毒」の定義はあるのですか。
食べ物や飲み物を口にすることによって起こる腹痛や下痢、嘔吐(おうと)、発熱などの健康障害のことです。食中毒には、微生物が原因の細菌性・ウイルス性をはじめ、アニサキスなどの寄生虫によるもの、フグ毒や毒キノコなど自然毒によるものなどがあります。
なぜ今の季節は要注意と言われるのですか。
食中毒は通年発生していますが、梅雨時から夏場は細菌性食中毒が増えてきます。食中毒を起こす細菌の多くは湿気を好み、人間の体温ほどの温度で増殖スピードが速くなるため、注意が必要になります。
季節に気を付けるべき食中毒の種類や原因などを教えてください。
近年、発生件数が最も多い細菌性食中毒は、ニワトリなどの体内にいるカンピロバクターによるものです。加熱不十分な鶏肉などを食べることで発症します。鶏ささみの刺身や湯引きなどは新鮮でも避けましょう。中が生焼けの唐揚げも危険です。カンピロバクターは冷蔵庫内でも生存し、比較的少ない数でも菌が人の体内に入ると腸内で増え発症します。潜伏期間が2~7日と長いのが特徴で、主な症状は吐き気や腹痛、水のような下痢(水様便)です。初期には発熱や頭痛、筋肉痛、倦怠(けんたい)感なども見られます。
加えて、カレーなど煮込み料理を大鍋で作り、翌日まで室温で放置した場合に増殖するウエルシュ菌や、調理する人の手指の傷から食品に入り増殖時に毒素を作る黄色ブドウ球菌による食中毒も要注意です。
季節を問わず多いアニサキスにも気を付けてください。サバやイカ、アジなどに寄生し、その刺身などを食べると発症します。アニサキスが胃の壁に入り込むことで食後数時間から十数時間後にみぞおちの激しい痛みや吐き気などが見られます。治療は内視鏡でつまみ取ります。酢やワサビでは死なず、加熱か冷凍処理が必要。釣った魚を生で食べる場合、すぐに内臓を取りマイナス20℃で24時間以上冷凍してください。
症状が出たら食中毒を疑ったほうがいいでしょうか。
食中毒は吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの消化器症状が多いです。同じ物を食べた人が同じ症状を起こしたことや食中毒を起こしやすい食べ物を食べたこともポイントになります。
ただ、消化器症状が起こるのは食中毒だけではありません。他の病気の可能性もあるので、医師の診察を受けましょう。腹痛がひどい、血便が出る、水様便が1日10回以上続く時は早めの受診を。症状が非常に強かったり、フグ毒のように唇や舌のしびれ、呼吸困難などの神経症状が出たりした場合は、すぐに救急車を要請してください。
普段の生活で気を付けることはありますか。
厚生労働省は食中毒予防の3原則として「付けない」、「増やさない」、「やっつける」を掲げています。特にカンピロバクター食中毒を予防するには、食肉を十分に加熱調理することが大切です。中心部を75℃以上で1分以上加熱します。食肉は他の食品と調理器具などを分けて処理や保存し、扱った後は手洗いをしましょう。食肉が触れた器具などは使用後に洗浄、消毒することが重要です。
また、買った肉や魚のパックはビニール袋に入れて野菜と離しましょう。買い物の後はすぐに持ち帰り、冷蔵庫などで保存してください。調理後に時間がたったり、消費期限を過ぎたりした食品は思い切って捨てることも大切です。
これからの季節、バーベキューを楽しむ人も多いでしょう。肉専用のトングを使って十分に焼く、食事用の箸で生肉を裏返さないことなども心掛けてください。
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