にいがた健活講座「ごぼう先生」「血栓症」「在宅医療」(9月27日)
(2025/10/29)

県民の健康づくりを応援する「にいがた健活講座」が9月27日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップ日報ホールで開かれました。「ごぼう先生の介護体操」「血栓症」「新潟市の在宅医療」の各講座には多くの人が参加し、講師や医療・介護関係者の話に耳を傾けながら、健康増進のヒントを探りました。
講座①「いつまでもお達者で ごぼう先生の介護予防体操」

講師
ごぼう先生(梁瀬 寛氏)
介護の「ご」、予防の「ぼう」で「ごぼう先生」と申します。
介護予防のキーワードは五つ。まずは「テクテク」。自分がどれだけ動けるかを知り、その範囲で体を動かす。「モグモグ」は口周りの健康。例えば「た」を5秒間に30回、発声できますか。意外とできないと感じることも大切です。年を重ねると、好きなことが今までのようにできなくなります。そんな時は周りを頼って続けましょう。それが「ワクワク」、「コツコツ」。最後に、お金のことなど、元気なうちに将来の準備をして不安を減らす「ドキドキ」。これらを意識してみてください。
僕のおじいちゃんは、おばあちゃんが先に天国に行った後、一人暮らしをしていて、掃除や洗濯、ご飯作りなど、自分でできることはしていました。ただ、今の夏の暑さではエアコンの調整などが難しくて夏バテしてしまい、自分から施設に入ることを決めました。毎朝、家の近所のコンビニでコーヒーを買うのが日課で、週2回のグランドゴルフが趣味だったので、施設に引っ越したらどうなるのか心配でした。でも、入居した翌日には、施設の近所のコンビニにコーヒーを買いに行き、1週間後にはグランドゴルフができるところを自分で探してきました。施設内で僕の体操をする会まで作ってくれました。ご飯やお風呂の心配がなくなり、余裕ができたのかもしれません。安心できる暮らしだから、やりたいことが再開できたのかなと思いました。今の介護サービスはすごく柔軟です。おじいちゃんの暮らしを見ていると、うまく周りの人にサポートしてもらいながら、上手に好きなことを続けている。僕自身、非常に勉強になりました。
自分の心が動いたり、誰かを応援したり、音楽を楽しんだり、そんな「恋」する100歳が増えたら日本がポジティブに、社会が明るくなると思います。
講座② 血栓の病から心臓をまもる、脳を救う

総合座長 猪又 孝元先生
(新潟大学循環器内科学教授 にいがた脳心センター センター長)
朝の血圧測定と130を目標に
エコノミークラス症候群などの「血栓症」と聞くと特殊な病気と思いがちですが、実はよくある病気で、脳と心臓の病気の多くは血の塊(血栓)が原因です。
心臓の筋肉は大きなエネルギーを必要としますが、それを養う栄養血管の冠動脈は、大きなものは3本しかありません。その血管が目詰まりして、心筋梗塞が起こります。心筋梗塞は動脈硬化の病気です。血管は徐々に不純物がたまって詰まるのではなく、突然詰まります。その理由は血栓。血管内のプラークが破れると瞬間的に血が固まり血栓ができ、血管が詰まるのです。プラーク破綻を予防するには、生活習慣病の管理と運動が有効です。
ただ、生活習慣病が全て一様のリスクで心臓や血管の病気を起こすわけではありません。飛び抜けて大きなリスクが、高血圧です。
そこで「にいがたSTOP高血圧プロジェクト」を立ち上げ、当センターと新潟県、医師会、企業などが一緒になって啓発などに努めています。「朝めし前の朝血圧」と「めざせ血圧130!」のキャッチフレーズを覚えておいてください。私も毎日、測っていますが、1分半ほどで測れます。朝の自宅での血圧は、私たち医者が極めて頼りにしているので、ぜひ測ってください。

大石 誠先生
(新潟大学脳研究所 脳神経外科学教授 にいがた脳心センター 副センター長)
脳が損傷してもリハビリで前進を
脳卒中の後遺症の代表的な病態は、言語障害や半身の運動まひですが、意外と知られていない「てんかん発作」もあります。脳は生体電気信号のやり取りをしながら、頭の中を絶えずぐるぐる動いています。脳梗塞などで脳の一部に傷がつくと、その周辺の神経が何とかしようと異常に活動し、暴走した時にてんかん発作が起こります。一番大きな発作はけいれんで、どんなに派手でも通常は1分以内に自然に終わります。短時間で繰り返したりする場合は救急車を呼んでください。
今はいい薬が出ていて、薬剤治療でほぼ止まります。制御できない場合は手術治療もあります。
そのほかに、感覚のコントロールセンターである視床に障害を負い、何もないはずの手や足に痛みや灼熱感を感じる感覚障害、注意や社会性、計算など、それだけが駄目という症状が出る高次機能障害、感情や性格の変化などがあります。
脳の損傷は完全には修復されないので、予防や早期治療が重要です。ただ起きてしまっても、神経ネットワークには再編や可塑性があり、ちょっとずつ良くなります。リハビリを励むことで発症時と3カ月後、1年後の状態は絶対に違います。悩み過ぎずに前に進むことも大事です。

田中 孔明先生
(新潟市民病院循環器内科 にいがた脳心センター 新潟副支部長)
胸、背中の激痛なら救急車を
胸の痛みは激痛や押される感じなど、いろいろありますが、冷や汗を伴う突然の激しい胸痛や背部痛が数分以上続いたら、命に関わる病気かもしれません。
急性心筋梗塞は、心臓に酸素と栄養を供給する冠動脈が急に詰まり、その先の血管が壊死(えし)する、生命に関わる病気です。決して珍しい病気ではなく、年間8万人以上が罹患(りかん)し、病院に運ばれても100人中8人ほどが亡くなります。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、たばこを吸う人はなりやすいです。
生活習慣を注意しても、急性心筋梗塞になることがあります。今は治療が発達していて、細い管のカテーテルや金属の金網のステントなどを使った経皮的冠動脈形成術(PCI)で血流を再開することで、自宅復帰や社会復帰ができます。多くの新潟の医療機関で受けられる、皆さんの命を救う治療です。
ただ血流再開が1時間後か、6時間後かでは、状況が変わってきます。心臓に血液が流れない時間を短くすることが重要です。冷や汗を伴う突然の激しい胸痛や背部痛が持続することがあれば救急車を呼び、早く病院にアクセスしてください。周りでそういう人がいたら、アクションを起こしてください。

森田 健一先生
(新潟市民病院脳卒中科・脳神経外科 にいがた脳心センター 新潟支部長)
薬とカテーテル 初動が大事
脳卒中は「Time is Brain(タイム・イズ・ブレイン=時は脳なり)」です。脳梗塞で脳の血管が詰まり、治療が1分遅れると、約190万個の細胞が死ぬと言われています。だから時間との戦いです。
私たちの治療は、脳梗塞が完成する一歩手前、脳梗塞になりはじめ、なりかけている部位を回復させるものです。脳梗塞は3~6時間でどんどん広がるので初動が大事です。脳の血管に心臓から血栓が飛んできて詰まる脳梗塞は、まず穿通枝(せんつうし)という細い血管に血が流れなくなります。脳の深部血管が詰まってくると手足が動かなくなります。脳の表面部分の血流が落ちてくると言葉が出なくなり、意識が悪くなり倒れます。時間がたつと脳が死んで回復できない、脳梗塞が完成した状態になります。

柏 麻美先生
(新潟市民病院循環器内科)
心房細動 知って見つけて
心房細動は不整脈の一つで、心房が心拍数を無視してすごい速さで動くため、脈がバラバラで速いと感じます。放っておくと、心不全や脳卒中、心臓や頭の病気に伴う死亡、入院、認知症のリスクが増えるとされています。自宅の血圧計や健診、スマートウオッチなどで見つかることがあります。
薬物治療に加え、根治にはカテーテルアブレーション(手術)が有効です。
心房細動は加齢とともに増える不整脈ですが、肥満や高血圧なども発症に関わっています。血圧が10下がると、心房細動の発症リスクが10%以上低下するとも言われ、カテーテルアブレーション治療後も血圧管理を続けると再発予防につながります。心房細動は早期に見つけて、早期治療が重要です。

水落 理絵先生
(新潟県福祉保健部健康づくり支援課 医師)
行政からのアプローチ 県循環器病対策推進計画
新潟県は、県民の健康寿命が延伸し、全ての世代が生き生きと暮らせる「健康立県」の実現を目指していますが、最近健康寿命が伸び悩んでいます。原因の一つが「循環器病」です。
循環器病とは心臓と血管の病気のことで、介護が必要になった原因の第1位でもあります。健康寿命の延伸には対策が不可欠です。
循環器病対策の推進は、県や脳心センターなど、循環器病に関わる人々、団体が連携・協働して取り組みを進めることが大事です。実は、この中に県民の皆さんも入っています。皆さんこそ、循環器病対策の主役です。元気でいたいという願いをさまざまな関係者がサポートしていきます。みんなが健康に暮らせる新潟県にしていきたいです。

高橋 公則先生
(新潟大学大学院生活習慣病予防・健診医学講座 医師)
健診を受けて血栓症予防を
日本人の生活習慣病として最も死亡に関連しているのは「高血圧」です。特に循環器病への関与は圧倒的です。血圧が高いほど、心血管疾患や脳卒中といった循環器疾患が増加。新潟県は脳血管疾患の死亡率が、男性が6位、女性が9位です。
これを何とかしようと、攻めの健診として「にいがたSTOP高血圧プロジェクト」に取り組んでいます。まずは測って自分の血圧を知ってほしい。習慣にすると、上の血圧が約3下がるそうです。心房細動も「おそばに心房細動研究」として、心房細動が見つかった人には紹介状入りの手紙を出し、受診しなければ会社に電話をして促しています。
健診で将来を見据え、今を変えてほしいです。

中村 純子先生
(新潟医療福祉大学健康栄養学科)
心臓と脳を守るお手軽ごはん
きれいな血管は引き算と足し算、両方が大事です。
引き算の代表格は減塩ですが、感覚だけでは成功しません。栄養成分表示の「食塩相当量」を見てください。調味料もしょうゆをソースに変えるだけで違います。おいしく減塩する方法はいくらでもあります。
足し算は、血管のお掃除成分です。例えば、青魚などの魚油は心血管系疾患の発症リスクを下げると言われています。青魚が苦手な人はアマニ油やえごま油でもOK。ポリフェノールなど、野菜や果物の色素などの成分のフィトケミカルは強い抗酸化作用があります。赤や緑、白など7色の食材を組み合わせて取ると効果的です。毎日の食事を楽しみながら、心臓と脳を守りましょう。
講座③「新潟市の在宅医療・介護連携推進事業」
「病気になっても自分らしく過ごす」ために今からできること

「にいがた健活講座」の一環として行われた新潟市在宅医療・介護連携推進事業「『病気になっても自分らしく過ごす』ために今からできること」。在宅医療に取り組む医師や医療・介護関係者がそれぞれの立場から意見を述べ合い、「病気とともにある人生を、その人が、その人らしく生きるために生活の場で支えます」と呼び掛けました。
基調講演をした堀川内科・神経内科医院(新潟市中央区)院長の今野卓哉医師は、全国で85歳以上の半数以上が「要介護」になっていることを踏まえ「1日でも長く生きることから、よりよい人生を生き切るために、地域完結型医療が必要です」と指摘。在宅医療が通院する医療、入院する医療、それに次ぐ「第3の医療」と言われていることを明示しました。
在宅医療は医師だけでなく、多くの医療・介護関係者が支えています。医療ソーシャルワーカーの渡邉浩行さん、主任介護支援専門員(ケアマネジャー)の荒木薫さん、訪問看護師の石井純子さんがそれぞれの立場から役割を説明しました。
信楽園病院(新潟市西区)で働く渡邉さんは「入院すると治療や学校・仕事、家族のこと、お金などが気になる」と指摘。「私たちは医療と福祉の相談窓口です。退院後の制度活用や地域との連携、地域の課題解決も考えていきます」と話しました。
荒木さんは、「65歳になる前に郵送される介護保険の被保険者証は介護認定時に必要となります。なければ区役所で再発行を」と呼び掛けました。「私たちが本人や家族の意向を聞いて在宅や施設サービスを受けるケアプランを作成します」と述べました。
石井さんは「訪問看護は、病院にいる時と同じような医療サービスを行い、主治医の先生の指示で点滴もします」と話し、24時間体制で治療やリハビリに取り組むことを説明。「家で過ごす当たり前の日常を取り戻してほしいと活動しています」と語りました。
4人のトークセッションで、今野医師は「家族に負担を掛ける。自宅では無理だろうと思えることでも、実際にできることはたくさんある。何とかしてあげたくて、難しいケースでも(在宅医療を)実現させたい」と思いを口にしました。
渡邉さんは「これからどうする? を決めなくても、いろいろな話をしておいてほしい」。荒木さんは「ケアマネジャーは中学校区の地域包括支援センターにいますので、確認してほしい」。石井さんは「介護を受ける人が何を大切にしているのか、その点を優先的に考えてほしい」と訴えました。
健康相談・測定コーナーにぎわう
日報ホールのホワイエでは、にいがた脳心センターの関係者や、医療関係者らが血管年齢測定や血圧測定を実施しました。「心臓なんでも相談」のコーナーも設置され、来場者が自身の症状などを伝えると、看護師が丁寧に説明していました。



コメント