明日野家が聞く・健活インタビュー「ピロリ菌」
- 11 時間前
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(2026/6/27)
ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ねて、健康を脅かす病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきます。明日からの健活に役立ててほしいと思います。
胃の中で悪さ あったら即除菌 内視鏡で確認

「ピロリ菌」という言葉を聞くと、どこかかわらしい響きを感じる方もいるかもしれません。しかし、その正体は胃の中で悪さをする、れっきとした「悪役」です。胃がんだけでなく、全身のさまざまな病気にも深く関わっていることが知られているのに、まだまだ十分に認知されていないピロリ菌について、村上総合病院の杉谷想一病院長が解説します。

すぎたに・そういち
村上総合病院 病院長。日本消化器病学会認定専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認 定医。
―ピロリ菌はどんな菌ですか? あると何が起こるんで
しょうか?

胃がんの原因
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の中に住み着いているらせん状のヘリコバクター属の細菌です。 実はこの菌、約5万8000年前にアフリカで生まれ、長い年月をかけて世界に広がり、約1万2000年前の縄文時代に日本を含む東アジアにたどり着いたとされています。その移動の歴史の中で変異を繰り返し、東アジアのピロリ菌は世界の中でも「極めて強力な毒素(発がん性)」を持つものに進化しました。
そのため、世界の胃がんの約4分の3が日本・中国・韓国などの東アジアに集中しており、日本単独でも世界の胃がんの約13%を占めているという深刻な現状があります(2022年WHO統計)。ピロリ菌が作る毒素は、アスベストやヒ素などと同じように、最も発がん性が高いグループ(カテゴリー1)に指定されています。実に、日本の胃がんの原因の99%はピロリ菌なのです。
同じヘリコバクター属の仲間である「ヘリコバクター・スイス」や「ヘリコバクター・ハイルマニ」といった別の細菌も発見され発がん性も疑われていますが、ヒトからヒトに感染し、発がん性がきわめて強いピロリ菌感染がやはり最大の問題で、ピロリ菌以外の「残り1%」は、現在も研究中です。
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を産生します。これにより、胃の中にある尿素からアンモニアを作りだし、周囲にアルカリ性のバリアを張ることで、本来なら細菌を死滅させるはずの強い胃酸の中でも生き抜くことができます。その一方で、ヒトの体外に排出されると生きていけないため、唾液や便の中ではしばらく生きていますが、動物の胃の中以外ではすぐに死滅します。水や土の中では生きていけません。また、感染しても、たまにおなかが痛くなったりムカムカしたりする程度で、基本的には何十年もの間、自覚症状が全くありません。そのため、「胃の調子が良いから大丈夫」と放っておくと、気づかないうちに胃炎が進行し、胃潰瘍や胃がんになるリスクが高くなります。
さらに、胃の病気だけでなく、「原因不明の血液の病気(血小板の減少)」「鉄欠乏性貧血」「慢性的なじんましん」のほか、認知症や腎臓病など、全身のさまざまな病気を引き起こす場合があることも分かっており、全員ではありませんが血小板減少症や貧血は除菌により完治する患者さんも多くいます。また、除菌後に口臭を測定して一部に数値の改善がみられたとする報告も存在します。
ほとんどの感染は幼児期
ピロリ菌に新しく感染するのは、胃の酸が弱く、免疫力が不十分な「5歳未満(特に3歳未満)の乳幼児期」だけです。大人の胃に入っても、強い胃酸に阻まれて住み着く(慢性化する)ことはありません。
昔の日本では、母親が一度口の中で噛み砕いた食べ物を赤ちゃんに与える習慣があったり、水洗トイレ・下水道などの衛生環境が整っていなかったりしたため、家庭内で大人から子どもへ、口を通じてうつることが主流でした。そのため、感染者は、昔感染した中高年がほとんどで、環境が整った若い世代の新規感染は年々減少しています。
この特徴を生かし、現在は「症状が出たり、胃炎が進んだりしてしまう前に、若いうち(中学生頃)に検査をして、速やかに退治してしまおう」という取り組みが日本全国の自治体に広がっています。ここ新潟県でも、長岡市などで「中学2年生(14歳)」を対象に、ピロリ菌検査と除菌治療を行う対策が進められており、将来の胃がん撲滅に向けた大きな成果が期待されています。
―除菌治療の方法と成功率はどの程度ですか?

健康診断や人間ドックでは、胃カメラをせずにピロリ菌の検査だけを受けることも可能です。しかし、健康保険を使って治療(除菌)を行う場合は保険診療上のルールがあります。まずは「胃カメラ(内視鏡)」で胃の中を観察し、医師が「ピロリ菌による胃炎の疑いがある」「胃がんがない」と確認した上で、本当に菌がいるかを確定する検査を行います=表参照=。
なかでも、「便の検査」や「息の検査(呼気テスト)」は、結果の正確性が圧倒的に高いため、治療後に「本当にピロリ菌が消えたかどうか」を判定する際には、ほとんどこのいずれかが使われます。
ピロリ菌が見つかった場合の治療は、「内服薬を1週間飲むこと」です。
・胃酸の分泌を抑える薬:1種類
・ピロリ菌を退治する抗菌薬(抗生物質):2種類 これらを組み合わせたお薬を、1日2回、7日間きっちり飲み続けます。
薬を飲み終えてから1ヶ月以上経ったあとに、きちんと菌が消えたかどうかもう一度検査します。
・1回目の治療(1次除菌): 約75〜80%の人が成功します。
・2回目の治療(2次除菌): 1回目で失敗しても、別の薬に変えて2回目まで保険診療でトライできます。2回目まで合わせると、全体の約85〜90%以上の人が除菌に成功します。
万が一、2回とも失敗してしまった場合でも、医療費は自己負担(保険外自費診療)になりますが、3回目、4回目の治療でお薬を変えて完全に退治する道もあります。「昔、除菌に失敗したから…」と諦めてそのままにしている方は、ヘリコバクター学会専門医による自費除菌を行っている医療機関を探して相談してみることをおすすめします。

―胃がんの予防で大切なことは何ですか? 検査はすごく重要なんですよね?

大人になってから新しく感染することは滅多にないため、「日常生活で感染予防に気を配る」必要性はほとんどありません。大切なのは、「すでに今、自分の胃の中にピロリ菌がいるかどうかを一度は検査ではっきりさせておくこと」です。ピロリ菌が見つかったら除菌による胃炎の治療による胃がん予防を最優先します。胃の状態を正確に知るには、バリウムを飲む検診よりも、直接胃の中を観察できる胃カメラ(消化器内視鏡)が最も確実で、がんの早期発見にもつながります。
「胃カメラは苦しいから苦手」という方も多いですが、現在の胃カメラは非常に進化しています。
・鼻から入れる胃カメラ(経鼻内視鏡): 経口内視鏡よりもかなり細く、舌の付け根に触れないため「オエッ」となりにくく、苦痛が少ないため希望者が増えています。
・口から入れる胃カメラ(経口内視鏡):経口内視鏡も以前に比べてかなり細くなりました。
いずれの内視鏡もデジタル技術の進歩により画像が極めて鮮明になり、AIによる補助診断機能がついた機器も開発され、小さながんを見つける性能はますます向上しています。
杉谷先生が伝えたい大切なこと
ピロリ菌を退治できたとしても、それまでにピロリ菌によって受けてしまった胃のダメージ(過去の傷跡)が残るため、胃がんのリスクが完全にゼロになるわけではありません。そのため、除菌に成功したあとも、定期的に胃カメラの検査を続けることが推奨されます。
ただし、もともとピロリ菌に一度も感染したことがない人や、早期の除菌で胃がとてもきれいな状態の人は、毎年検査をしなくても大丈夫な場合もあります。自分に合った適切な胃カメラの受け方については、医師によく相談して確認してください。
「ピロリ菌を調べて、いればすぐに除菌すること」、そして「定期的な胃カメラで万が一の病気を早期発見すること」。医療が進歩した現代だからこそこの二つを実践して、胃がんで命を落とすようなことがないようにしましょう。


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