従業員の健康増進を通し、生産性や企業価値を高める「健康経営」が注目されています。県内でも社内で独自に健康づくりのキャンベーンをしたり、食事や運動などの取リ組みを行ったリする企業が増えています。県内で健康経営に積極的に取り組む企業の事例を3社ずつ、2回に分けてこ紹介します。(次回掲載は3月を予定)
【キャンペーンで従業員の関心アップ】
●健康づくりキャンペーン 2018年から年1回、社内で運動や食に関する「健康づくりキ ャンペーン」を行っています。本年度は暴飲暴食をせず適正なカロリー量を摂取すること、食事バランスを見直すことを目的に「食事チャレンジ」を実施。8~10月の3カ月間、毎食のカロリー を表に書き込んでもらいました。達成率に応じて賞品が贈られました。
●健診受診への取り組み 健康診断・人間ドックの受診率は100%。再検査の人には会社独自で受診勧奨をしており、健診・ドックだけでなく、再検査費用も全額補助しています。 生活習慣病に関する5項目については会社で有所見者数の推移などを集計し、結果を踏まえて1年間の健康課題や健康活動を決めています。

●定期便を使った情報発信 従業員の意識向上のため、毎月、健康情報をメ ールで発信しています。2019年7月に第1号を発信、既に40号を超えました。体の部位ごとの健康情報 の連載や生活習慣病の解説などをしています。

健康づくりキャンペーンに参加
船長 野口靖久さん
日頃食べているものが体型維持にどう影響するか気になっていたので挑戦しました。カロリーを一品ずつ調べるのは大変でしたが、意外に摂取カロリーの少ない日が多いことに気づきました。健康を意識する機会になりました。

健康診断の結果でBMIや血圧など生活習慣病に関連する項目の有所見率が全国平均を大きく上回っていたことが健康経営の取り組みを始めるきっかけでした。担当者を決めてできるところから継続的に取り組んだ結果、従業員の関心も高まってきていると感じます。課題だった健診の有所見率も改善が見られます。 代表取締役社長 佐藤紳文さん
曳船業は危険が伴う業務であるとともに突発的な勤務や夜勤もあり、 不規則な生活になりがち。船員は 少人数で狭い空間に長時関過ご すことにもなり、 心身の健康は安全 への第一歩。

日本海曳船株式会社 〒950-0072新潟市中央区竜が島1T目7番14号 TEL:025-244-2331(代表)FAX: 025-241-8862 https://www.nk-eisen.eo.jp/ ■事業内容/入出港船舶の曳航サー ビス(曳船数11隻) ■設立/1967年10月 ■従業員数/72人(2022年10月現在)
【他企業と連携し健康増進と地域貢献】

●社員食堂での取り組み 2017年から社員食堂の抜本的改革を掲げ、食堂を運営するグループ会社「日精サービス」と協議し、低カロリーで塩分控えめのランチ提供などを手掛けています。地元団体や企業とのコラボにも盛んに取り組んでおり、長岡農業高校の生徒が作った米や卵を使ったり、吉乃川(長岡市)の酒粕を使った定食を提供したりしています。12月からは一正蒲鉾(新潟市東区)とコラボ。魚のすり身を利用した魚介類の代替品「ネクストシーフード」によるウニ風味の料理提供を始めました。12月の特別メニュー「まるでウニ丼!?」は大好評。地域の食材を生かしつつ、健康増進に役立って企画する人も、食べる人も、提供する人も楽しめる取り組みを心がけています。 ●歯科・ロ腔分野の取り組み 健康保険組合のレセプト(診療報酬明細書)データによると、外来受診で一番受診料がかかっているのは歯科で、8割は歯肉炎と歯周疾患となっています。歯周病は全身疾患とも関わりが深いことから、歯周病予防に取り組んでいます。糖尿病の人に歯科受診を促しているほか、昼食後の歯磨きを勧める活動を展開。事後アンケートでは歯間プラシやフロスを使うようになった人の増加がみられました。巡回健診の待ち時間でも歯周病や歯磨きについての啓発スライドを映すなどしています。

●あいさつ運動 2021年10月に社内公募で健康経営推進サポートチームが発足し、20~60代の6人が参加しました。話し合いで「社内のコミュニケーションをとりたい。あいさつで活性化したい」との声が上がり、あいさつ運動を始めました。海外の現地法人を含む100人ほどが登場する約4分間の動画を作成。
コミュニケーシ ョン向上に取り組んでいます。
サポートチームメンバー
外装設計部 奈良橋直人さん
多くの人に共感してもらえ、あいさつが促進される動画にできたと思います。今後も積極的なあいさつやコミュニケーションを通じて同じ職場やプロジェクトメンバーが気持ちよく働ける雰囲気を作りつつ、仕事のパフォーマンス向上につなげたいです。

社員が心身ともに健康であれば、成果が出て利益が出ます。不摂生をやめ、健康になる取り組みに社員が自然に賛同し、実践してもらうことを大切にしています。社員の声を聞き、全社に向けてヘルスリテラシーの向上を図ることが大切だと考えます。
取締役常務執行役員
東政利さん
日本精機株式会社
〒940-8580長岡市東蔵王2丁目2-34
TEL:0258-24-3311(大代表) FAX:0258-21-2151
https://www.nippon-seiki.co.jp
■事業内容/四輪車用・ニ輪車用・汎用計器類、OA•情報機器操作
パネルなどの設計、開発、製造販売、施工指導など
■設立/1946年12月24日
■従業員数/1,750人(2022年3月31日現在)
【 できることから 計画的に課題解決】

●禁煙と口腔衛生の取り組み
喫煙率の高さが課題だったことから、喫雉者への聞き取りを行い、敷地内禁煙や卒煙支援の講習会などに着手しました。禁煙の取り組みは計画を立て社内での周知に時間をかけて実行。社会保険労務士に相談して課題を整理し、禁煙の重要性や合理性を全員集会で説明したほか、市内の呼吸器内科医を招いた卒煙のための講習会を行いました。喫煙所の移動や就業時間内禁煙などを経て2年をかけて、2022年4月に敷地内の全面禁煙を実現。喫煙できる場所や時間が制限されたことで禁煙に成功した人がいるほか、「本数が減った」などの声も出ています。また、歯の健康が全身の健康につながることから、歯・ロ腔の健康に本年度から重点的に取り組んでいます。社員の半数以上が昼食後の歯磨きを行っていなかったため、食後の歯磨きを推奨。歯磨き粉のサンプル配布や洗口液の設置をしています。洗口液について従業員からは「口がすっきりする。続けてほしい」との声が寄せられています。
卒煙者の声
管理部 諸我保さん
喫煙の健康への影響は理解していましたが、1日10本のたばこをやめることができませんでした。しかし、喫煙所の閉鎖など吸える時間や場所が限られるようになったことをきっかけに、禁煙できました。部内唯一の喫煙者だったので何より周囲からのプレッシャーが強かったです。

●運動機会の増加
登山やハイキング同好会の設置や地域企業とのソフトポール大会、越路地域の市民駅伝大会への参加など、さまざまなテーマ・メンバーで「できること、好きなことから」運動機会を増 やす取り組みを辰開しています。また、業務中は隣接する工場間移動(往復約1000歩)を徒歩に限定。移動に伴う消費カロリーや歩数を玄関に掲示しているほか、雨の中での移動を考慮して従業員用の雨傘も設置しています。1日に3、4往復する社員も多く、運動不足の解消につながっています。

●食生活改善の取り組みに
従業員の血圧の悪化傾向を踏まえ、塩分を3.9g以下、エネルギー を600キロカロリー以下に抑えたお弁当を推奨。 8~10月には会社が昼食代の補助を増額しています。食堂には体重計と血圧計を置き、社員が気軽に計測できます。

会社の体制や事業構造の変革に着手する中、設備や製品が変わっても社員が心身共に健康な状態で働き、生産性やパフォーマンスの向上が図られるよう健康経営の取り組みを進めています。やれるところ、好きなことからやっていく中で課題が分かり、それを解決しようとさらに取り組みが広がっています。ただ、健康課題は成果が見えにくいのが課題。国や県などの制度で評価してもらうことで、より取り組みやすく、従業員のモチベーションにも繋がっています。
代表取締役社長
貴島真太郎さん
KYBトロンデュール株式会社
〒949-5406長岡市浦3909番地
TEL:0258-92-6903 FAX:0258-92-6921
■事業内容/自動車用電子制御機器、ステアリングシステム製品の製造
■設立/1992年1月
■貸業員数/81人(2022年9月1日現在)