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  「生活」のススメ 

  • 17 時間前
  • 読了時間: 4分

         (2026/7/7)

 当たり前のようにある医療・介護・福祉(以下、医療福祉と記します)が当たり前でなくなりつつあります。最たる原因は、ご存じの通り人口減少と少子高齢化です。世界最先端を突き進むわが国の急速な高齢化は医療福祉需要を急増させ、高齢者のみの世帯を増やしています。深刻なのは働き手人口の減少です。生まれる子どもの数は恐ろしい勢いで減っており、将来の働き手がさらに減少することを約束しています。いずれ高齢者人口も減少するものの、働き手の減少はこれを大きく上回るため、今できている医療福祉は確実に減っていきます。医療福祉だけではありません。働き手の減少はすべての仕事に大きな影響を及ぼします。運転手が減ってバスの運行が減る状況と同じです。


JA新潟厚生連佐渡総合病院

病院長 佐藤 賢治

       


   進む医療福祉の縮小


 当たり前にあった医療福祉が縮小あるいは撤退すると聞かされれば、住民は不安になるでしょう。行政への陳情や署名活動が始まり、縮小・撤退する医療機関には抗議の声が殺到します。しかし、誰がどんなに努力しても働き手がどこかから湧いて出てくることはありません。

 医療福祉にはこれまで以上にお金がかかるようになりました。医療の著しい進歩は医療費を押し上げ、高齢化は病院や介護施設の職員のケア業務を増やします。自宅でも、高齢者しかいない、あるいは一人暮らしだと誰かの支援が必要になります。経費の急増は、働き手の減少と相まって医療福祉の縮小・撤退に拍車をかけます。

 どうしたらよいのでしょうか。税金や保険料など国民負担を増やして医療福祉にお金を回すことがまず考えられます。しかし、物価が高騰し、実質賃金が上がらない中、みなさんは許容できるでしょうか。自腹を切ってでも医療機関や介護施設を残そうと思えるでしょうか。思えたとしても働き手の減少は止められません。

  

                 生きざま 見つめたい


 医療福祉の縮小・撤退が避けられないのであれば、解決策は「医療福祉が必要になる時間を短くする」しかありません。病気にならなければ、介護を要しなければ医療福祉は不要です。そんなことは不可能なので、病気になっても重症にならないようにする、頭と身体を弱らせないようにして要介護になる時期を遅らせることがキモになります。つまり、「生活できる時間を保つ」視点が重要です。

 健康診断や人間ドックを受けても結果を生かさなければ意味がありません。重症化してからの入院や長期入院は生活する力を大幅に下げてしまいます。外来通院で状態の悪化をいち早く発見し、必要であれば重症になる前に入院して短期間で退院する概念が、医療従事者にも患者側にも必要です。日頃から本を読み、外に出て人と関わり、歩くことを欠かさない生活は“ピンピンコロリ”の条件です。そうしていても大病を患ったり、事故などで生死の境をさまよったりすることがあるかもしれません。大きな後遺症が残っても、寝たきりになっても、治らない病気になっても、あるいは死期が迫っている状態になっても、その後の生活は組み立てられます。

 このときに核となるのがそれまでとこれからの人生観です。何を大切にしてきたのか、何に喜び、悲しんできたのか、何をやり遂げたのか、やりたいと思っていてもできていないことは何か、など自分の“生きざま”をいつも考えてみて下さい。また、考えた“生きざま”をご家族や友人に話してみてください。あなたの“生きざま”を伝えていただければ、医療福祉従事者はその人に合わせた支援ができます。“ボーっと生きている”だけでは支援方法が分からず、本人やご家族、医療福祉従事者全員に不満がたまります。


   生きるを「活かす」


 その人の人生は、生きていることを自分自身が「活(い)かす」時間と思います。「どうやって活かしていこうか?」と考えることそのものが人生を豊かにする秘訣(ひけつ)である気がします。医療福祉の目的は生活にあり、その役割は「生」を「活」かすことへの支援です。診断と治療だけが医療の役割ではなく、お世話をするだけが介護の役割ではありません。あなたの「生活」を教えていただけると私たちはとても助かります。

 

6月6日、佐渡市で行われた健康セミナーの登壇者と(左から4番目が佐藤病院長)
6月6日、佐渡市で行われた健康セミナーの登壇者と(左から4番目が佐藤病院長)
【略歴】 さとう・けんじ 1986年、新潟大学医学部卒業、新潟大学外科教室入局、95年佐渡総合病院外科勤務、2001年、同病院外科部長、15年、同病院副院長を経て16年、同病院病院長に。日本農村医学会理事長、一般社団法人佐渡地域医療・介護・福祉提供体制協議会副理事長、京都大学大学院医学研究科非常勤講師。


 次回は糸魚川総合病院病院長の山岸文範先生です。糸魚川市は上越市とも富山市とも距離がある地域で、糸魚川総合病院は地域医療の中核。山岸先生は病院長として奮闘されています。

協力:株式会社メディレボ








 
 
 

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