新たなコラムの最初を務めるということで、どんなことを書こうか悩みます。
まず、私自身がこれまで関心を持って取り組んできたことは何か。医師になってかなりの年月がたちますが、医者になった当初は、内科、特に呼吸器内科の専門性を追求し、その後大学の教員として医学教育の改革に関わり、総合診療部に移って大学病院の医師臨床研修体制を立ち上げ、さらに、大学病院長になって本県の医師不足対策、医療提供体制の整備、…などが思い浮かびます。そして、現在は魚沼基幹病院の病院長として、地域の医療に取り組んでいますので、直近の関心事である新潟の医療について、今思っていることを書いてみたいと思います。
魚沼基幹病院長 鈴木榮一
医師少数県としての本県
みなさんは新潟県の医療をどのように評価されるでしょうか。新潟県は、広大な面積(全国5位)と全国15位の人口であり、人口減少と少子高齢化が進んでいる県です。そして、医師偏在指標47位(最下位)(最近評価法の変更で少しだけ上がった?)の医師少数県ですが、新型コロナウイルス感染症への対応をみても、(残念ながら亡くなられた方もいらっしゃいますが)少ない医療資源の中で、新潟県、新潟大学、新潟県医師会など、オール新潟体制で「比較的よくやっている」というのは、医療を提供する側の勝手な思いでしょうか。 今の日本、少なくとも日本の医療界や医療関係者の間では、「地域医療構想」というのが検討されており、新潟県でも県全体、あるいは各医療圏で地域医療構想調整会議が開催され議論されています。また、「地域包括ケアシステム」の構築の重要性も少しずつ認識されてきています。
進む地域での連携の取り組み
地域医療構想は、医療機関の機能分担と連携、特に入院機能・救急医療の役割分担と連携推進を目指すものであり、さらに最近は、外来機能の役割分担と連携も検討されています。医療関係者間での理解、議論は少しずつ進んでいると思いますが、実際には、医療を受けるみなさんの理解と実際の受療行動がきわめて重要です。
また、地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・福祉・住まい・生活支援等の多職種連携、そして、「住み慣れた地域で安心して生活することができる」ことを目指すものであり、医療だけでなく多くの職種、行政、さらにそこに住むみなさんの理解、実際の行動が必要です。医療等に関わる事項は、なかなか難しい点が多いかもしれませんが、ぜひ関心を持っていただければと思います。今健康でも、将来のご自身のために、あるいは、身近なご家族のために、よろしくお願いします。
県民が平等な医療を受けられる県に
一部の先進(?)諸外国のように、裕福な人だけが高度の医療を受けられる社会ではなく、貧富の差なく、誰でもほぼ同じ医療が受けられる社会、さらに、どこに住んでいても比較的均等な、偏りのない平等な医療が受けられる制度になることを期待します。国では、社会保障費の増加が今後の日本の課題になっていますが、国の議論(全世代型社会保障改革)の「自助・共助・公助」そして「絆」や、医療を提供する側だけの議論でなく、医療を受ける側の立場での議論・理解は不可欠であり、難しいかもしれませんが少しでも関心を持っていただければと思います。
「健康立県」の実現には、健康寿命の延伸、健康診断の重要性などが、より身近で大切なことではありますが、これらは今後の執筆者にお願いすることとし、私自身が今関心を持っていること、県民のみなさんに関心を持っていただきたいことを書かせていただきました。「どこに住んでも県民みんなが平等な医療が受けられる新潟県に!」なることを期待しています。
(2023.7.5掲載)
病院や地域医療について県民にお知らせするさまざまな情報誌も発行されています
すずき・えいいち
新潟市西蒲区(旧巻町)出身。新潟大学医学部卒。聖路加国際病院(東京)などで勤務し、新大医歯学総合病院医科総合診療部教授、同病院長、新大理事・副学長を経て、2020年4月から現職。専門は呼吸器内科。
次回は鈴木先生の研修医時代の呼吸器内科の指導医だった横山晶先生(公益財団法人新潟県保健衛生センター会長、結核予防会新潟県支部代表)を予定しています。
協力:株式会社メディレボ
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