認知症と共に生きる時代へ―私たちが今日からできる予防策
- 18 時間前
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(2026/6/8)
認知症と「共生社会」

超高齢社会の現在、認知症は高齢になれば誰もがなりうる身近な病気です。かつての「何もできなくなる」という誤解は見直され、希望を持って自分らしく暮らす「新しい認知症観」が広がっています。これを背景に2024年、「認知症基本法」が施行されました。目的は、認知症の人が尊厳を持ち、能力を発揮しながら共に生きる「共生社会」の実現です。私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、温かく見守る社会を作ることが求められています。
総合リハビリテーションセンター
みどり病院 病院長 成瀬 聡
認知症リスクの約半分はコントロールできる
認知症を完全に防ぐ魔法の薬はまだありませんが、希望となるデータがあります。世界的な医学誌『Lancet』の2024年の論文によると、認知症の要因の約半分(45%)は「予防や改善が可能な身近な生活習慣など14のリスク因子」であると報告されています。遺伝や年齢は変えられませんが、リスクの約半分は私たちの手で変えられるのです。WHO(世界保健機関)などの研究でも、「人生のどの段階から予防を始めても確かな効果がある」と結論づけられています。予防に「早すぎる」ことも「遅すぎる」こともありません。今日から始められる「脳を守る三つの柱」を詳しくご紹介します。
柱1:体を動かし、脳に栄養を届ける(体の健康と生活習慣)
・運動と食事:WHOも強く推奨しているように、早歩きなど「少し息が弾む程度の運動」を習慣にしましょう。運動は脳の血流を直接アップさせます。食事は新鮮な野菜、良質な油を含む魚、大豆製品をバランスよく摂ることが脳の栄養になります。塩分や炭水化物の摂りすぎには注意しましょう。
・習慣のリセット:脳の血管を傷つける習慣を手放すことは、薬と同じくらい強力です。禁煙は認知症リスクを劇的に下げます。お酒は適量(日本酒1日1合、ビール中瓶1本まで)にとどめ休肝日を設けましょう。中年期の肥満は脳の負担になるため適正体重の維持も重要です。
柱2:持病を管理し、感覚を守る
・持病のコントロール:脳は全身の血液の約20%を消費するため、血管を健康に保つことが脳神経を守ることに直結します。かかりつけ医と協力し、血圧、血糖値、悪玉(LDL)コレステロールをしっかり管理し、脳へのダメージを防ぎましょう。
・耳と目を守る:音や光は、脳の活動を維持する大切なエネルギー源です。難聴の放置は脳への負担を増やし、社会的孤立を招きます。また、視力低下も新たなリスクとして判明しました。定期的な検査を受け、メガネや補聴器を適切に活用して脳への「刺激」を保つことが推奨されます。
柱3:頭を使い、人とつながる(心と社会のつながり)
・頭を使う:自ら考え、話し、文字を書く習慣が脳の神経細胞を活性化させます。また、運動しながら計算をする「デュアルタスク(二重課題)」も非常に効果的です。趣味や新しいことへの挑戦を楽しみましょう。
・社会参加と心のケア:孤立やうつ状態は、脳の機能を低下させる大きな要因です。地域の集まりやボランティアなどに参加し、会話を楽しむ社会参加が、最強の「脳のトレーニング」になります。意欲が低下している場合は一人で抱え込まず、医師に相談して、うつへの対応を行ってください。
組み合わせて効果を最大化する

世界の最新研究が最も推奨しているのが、これらの予防策を複数組み合わせる「複合的介入」です。「運動だけ」「食事だけ」よりも、すべてを組み合わせることで歯車がかみ合い、脳を守る力は何倍にも大きくなります。
すべてを完璧に行う必要はありません。できることから日々の生活リズムの中に無理なく溶け込ませていきましょう。ご自身のペースで今日からできる一歩を踏み出し、認知症になっても安心して笑顔で暮らせる「つながる医療の輪」を一緒に広げていきましょう。

(2026..6.8掲載)
【略歴】なるせ さとし 1986年新潟大学卒業、新潟大学脳研究所神経内科学教室入局。97年米国ジョンズ・ホプキンス大学、シカゴ大学留学。認知症の研究に従事する。2012年総合リハビリテーションセンター・みどり病院病院長、14年認知症疾患医療センター長兼任。
次回は佐渡総合病院院長の佐藤賢治先生です。佐藤先生とは大学の同級生。現在も新潟県の病院長会議や新潟県のイノベーター育成臨床研修コースなどでご一緒させていただいています。佐渡の地域医療を一手に背負い、数々のアイデアでイノベーションをもたらしています。
協力:株式会社メディレボ


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