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みんなの医療・介護 NIC健康セミナー2023(特集)

 医療の専門家を招き、健康づくりのヒントを学ぶ「みんなの医療・介護 NIC健康セミナー」(NIC新潟日報販売店グループ主催)が2023年度、県内7医療圏の各会場で開かれました。県民の健康増進を応援する新潟日報社の「目指せ‼健康寿命日本一。にいがたプロジェクト」の一環。参加者はがんや糖尿病といった疾病の治療や予防法、再編が進む地域医療の展望などについて理解を深めました。(肩書は開催時)


医療持続へ住民理解を

佐渡市

 佐渡市の金井コミュニティセンターでは、佐渡総合病院の佐藤賢治院長、同病院内分泌代謝科の福武嶺一医師、まもる歯科の渡部守院長らが登壇。約60人が佐渡医療圏の課題や展望、糖尿病や口腔(こうくう)ケアについて学びました。

 佐藤院長は、少子高齢化により島内の病院の収益が低下、医師や看護師などの確保が今後、困難となる現状を指摘しました。その上で「各機関が機能を分担し連携、人材育成や情報共有を進める必要がある」と強調。「住民の理解がなければ、島内の医療・福祉は回らない」と協力を呼び掛けました。

 また、福武医師は「糖尿病診療の現状と基礎知識」と題し講演。合併症として神経障害、網膜症、腎症などを挙げ、「神経障害では最初に両足のつま先に症状が現れる。触った感じが鈍い、熱く感じるなど症状はさまざま」と紹介しました。

 渡部院長は「年を取り、口の機能が衰えるオーラルフレイルを放置すると要介護のリスクが高まる」と説明。「虫歯や歯周病は予防が可能であり、家族でメンテナンスをしてほしい」と訴えました。


禁煙、節酒でがんを予防

十日町市・津南町

 十日町市の市医療福祉総合センターでは、がんの予防法や治療法、総合診療医の役割などをテーマに約60人が知識を深めました。

 十日町病院の清﨑浩一副院長は、がんを予防する対策として禁煙や節酒、食生活、身体活動を挙げました。「BMI(体格指数)が21~26.9の男性はがんのリスクが低い」と述べ、「太りすぎだけでなく、痩せすぎも良くない」と注意を促しました。

 また、討論形式で行われた総合診療医の講演では、同病院の齋藤悠診療部長らが講師となりました。齋藤部長はさまざまな病気に対応する総合診療医の役割を「守備範囲の広いプレーヤー」「カメレオン」などに例えて「専門医とタッグを組み患者、地域を丸ごと診ている」と解説。地域の医療資源が限られる中、「医師個人の力では限界がある」とし、「看護師や薬剤師、行政、そして住民の協力が不可欠」と呼び掛けました。

 新潟大学大学院医歯学総合研究科の菖蒲川由郷特任教授は、健康寿命延伸のため「かかりつけ医を持つ」「地域で助け合う」ことなどを提案しました。


心機能改善、運動が効果

糸魚川市

 糸魚川市の糸魚川地区公民館では、糸魚川総合病院の山岸文範院長、同病院循環器内科の沼哲之部長らが講演。約50人が地域医療の展望や運動療法を取り入れた心臓病、血管病治療などについて耳を傾けました。

 山岸院長は、少子高齢化で患者数が減り、病院経営が厳しくなる中、今後、病院の集約化が進む状況を解説。医療関係者だけでなく、「市民自らが医療の未来について考え、望んでほしい」と訴えました。

 また、沼部長は「心臓病、血管病に運動療法を取り入れる」と題し、体力保持に必要な運動療法(心臓リハビリテーション)の重要性を説明しました。

 運動療法の効果として「心臓のポンプ機能を改善させ、血糖を安定させる」ことなどを紹介。運動の種類と代謝の関係性を述べた上、「ウオーキングなどの有酸素運動は疲労が少なく、長時間継続できる。1回30分以上、週に3回以上、まずは3カ月取り組んでみては」と参加者に勧めた。

 糸魚川市の担当者からは。健康寿命を延ばす対策として年に1度の健康診断の受診や、バランスの取れた食生活などが紹介されました。


「急性期」担う基幹病院

燕市

 燕市の市中央公民館では、2024年3月の済生会新潟県央基幹病院(三条市)開院によって変わる地域医療や、健康長寿につながる骨折予防の秘訣(ひけつ)について約80人が知識を深めました。

 県立燕労災病院(2月末で閉院)の遠藤直人院長(現済生会新潟県央基幹病院長)、整形外科の野﨑あさみ医師らが講師となりました。

 遠藤院長は、「基幹病院は救急や手術などの急性期医療を主に担う」と強調。病状が安定した後は近隣の病院へ転院するなど、県央地域全体で一つの病院の様に連携するとし、「住民の理解が何より重要。日頃から家族間で話し合ってほしい」と呼び掛けました。

 また、野﨑医師は「高齢者が要支援や要介護になる原因の約12%は骨折」と説明。「自覚症状がないからと見過ごされがちだが、知らない間に骨がもろくなっていることが多く、誰でもなり得る病気」と指摘した上、「定期的に検査を受け、適切に治療を行うことが大切」と注意を促しました。

 燕市保健センターの担当者は、市のワクチン接種の情報などが届く「健康・医療・子育てLINE」を紹介しました。


体動かして老化を防ぐ

見附市

 見附市の市保健福祉センターでは、見附市南蒲原郡医師会の山谷春喜会長、見附たなはしクリニックの棚橋怜生院長らが講演し、約60人が地域医療の現状や課題、健康寿命を延ばすこつを学びました。

 山谷会長は、「市内の医師会員数は右肩下がりで、人口10万人当たりの医師数は県内最低クラス」とグラフを示して説明。「年代別では60~70代が中心」と医師の高齢化が進んでいる現状を明かし、市の診療所開業資金の支援や、市立病院と医師会の連携などの取り組みを紹介しました。

 また、糖尿病専門医の棚橋院長は、筋肉が衰えた状態「サルコペニア」が骨折などの原因になることを挙げ、「血液中のブドウ糖を取り込む能力が落ち、血糖値も上がりやすくなる」と解説しました。

 「運動することで筋肉から分泌される物質『マイオカイン』は動脈硬化やがんの予防にも働き、全身の老化を抑制する」と棚橋院長。「良質なたんぱく質を取り適度に運動することが大切」と呼び掛けました。

 一方、見附市の担当者は、日々の歩行や運動などにポイントが与えられる市の「健幸ポイント」事業についてPRしました。


医師集約し救急に対応

新潟市

 新潟市中央区の日本赤十字社県支部クロスホールでは、県医師会の堂前洋一郎会長、長岡赤十字病院の宮島衛・救命救急センター長らが講演。約50人の参加者を前に、救急医療の現状や今後の見通しを示しました。

 堂前会長は「医師の時間外労働に上限を設ける2024年以降の「医師の働き方改革」に触れ、「特定の病院に医師を集約する必要がある」と強調。「新潟市は先進都市に比べ、救急医療機能が分散しており医師などの集約が不十分」とし、年間8千台以上の救急車を受け入れる新たな拠点として済生会新潟病院を選定したことを紹介しました。

 一方、宮島センター長は、災害派遣医療チーム(DMAT)の役割などについて解説。本県のドクターヘリの出動件数(22年度)が2310件と全国2位であることを紹介し、「新潟大学医歯学総合病院と長岡赤十字病院で県内の人口密集地域を重複してカバーしている」と語りました。

 また、日本赤十字社県支部の担当者は、食品などの日常備品を減った分だけ買い足す「ローリングストック法」を提案しました。


現場で進むデジタル化

村上市

 村上市の村上市民ふれあいセンターでは約50人が参加。今後の地域医療の在り方や、股関節痛のメカニズムや治療法について医師が解説しました。

 村上総合病院の林達彦院長は1959年以来、無医村が続く粟島浦村で、2000年から行っているテレビ電話診療などの取り組みを紹介。「デジタル技術を活用して地域医療との連携を強化するなど、誰一人取り残さない医療体制の構築を目指す」と述べました。

 また、同病院整形外科部長の白野誠医師は、股関節の痛みの原因と治療法について講演。骨のイラストやレントゲン画像を用い、骨折や脱臼、ねんざなどの外傷や徐々に悪化する変性疾患について説明しました。

 「技術の進歩により、手術前に撮ったCT画像をコンピューターでシミュレーションを行い。合併症の少ない手術が可能になった」と解説し、「村上でも最先端の手術をやっている」とPRしました。

 村上市の担当者は、市の介護予防教室「元気応援むらかみ教室」について紹介。3カ月のトレーニングで症状が回復した90代男性の例を挙げ「いくつになっても元気になれる」とアピールしました。


参加者の声

〈佐渡会場〉50代男性 地域医療のシビアな現状がよく分かりました。「生活を楽しむための摂生」という先生の言葉に勇気をもらいました。

〈十日町市・津南町会場〉70代女性 複数の不調を感じることが多く、どの科を受診したらよいか迷います。総合診療医の必要をとても感じました。

〈村上市会場〉70代女性 股関節に問題があるためセミナーに参加しました。先生のお話を伺い、勉強になりました。希望が少しわいてきました。


2024年度 5医療圏で開催

 2024年度は県内7医療圏のうち、5医療圏でNIC健康セミナーを開催しました。小千谷市(6月)、五泉市(7月)、妙高市(8月)、加茂市(9月)、南魚沼市(10月)が会場となります。専門家が地域医療や疾病対策などをテーマに講演するほか、健康相談会なども実施する予定です。


主催 NIC新潟日報販売店グループ 協力 株式会社メディレボ













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