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不妊と思ったら ~男性不妊症とは~

原因は男性側にあることも多いのです。

そして治療介入できる範囲は広がっています。

 世界保健機関によれば、不妊の定義は「妊娠を望む男女が避妊をせずに性行為をしているのに12カ月以上にわたって妊娠に至れない状態」とされています。不妊の主たる原因が男性側に認められるものを「男性不妊症」と言います。同機関が発表したデータでは、不妊の原因が女性41%、男性24%、男女共24%、不明11%とされています。半数近くに男性因子が見つかる可能性があり、男性不妊症を疑わずして不妊治療を開始することは望ましくありません。

 男性側の不妊の原因として、造精機能障害、性機能障害、精路通過障害などが挙げられます。多くを占めるのが造精機能障害で、その一部の原因に精巣周辺の血管がこぶ状に肥大する精索静脈瘤が挙げられます。これは二人目不妊の原因としても多い病態で、手術による改善が期待できます。また造精機能が著しく低下している非閉塞性無精子症、精路通過障害による閉塞性無精子症などの場合は、精巣内精子を回収する方法で妊娠を目指すことができます。

 最近多いと感じているのが性機能障害で、大きく勃起障害と射精障害に分けられます。勃起障害に対しては内服薬で治療することがあります。性機能障害の原因には身体的要因や心理的要因があり、時にこれらが複雑に組み合わさることもあるため、十分な問診が必要であると考えています。

 2022年4月以降、人工授精や体外受精が保険適応になりました。併せて男性不妊治療のための一部の薬剤や精巣内精子回収術なども保険診療対象となっており、費用面での負担は軽減されています。

 男性側に重度の精子減少症が認められた場合、体外受精胚移植に進むカップルもいらっしゃいますが、いざ採卵術を実施したところ、卵の回収が不良、未熟卵が多いというケースもあります。不妊はどちらかの原因と考えるのではなく、夫婦が共にゴールに向かって歩んでいく姿勢がとても大切です。非常に難しい状況でも夫婦共に不妊治療に積極的なカップルは、治療成功率が高まる印象を持っています。

イラスト/natsu(イラストレーター・デザイナー)


 





ミアグレースクリニック新潟 院長

茅原 誠さん

★PROFILE★

日本産科婦人科学会専門医・臨床遺伝専門医・生殖医療専門医・医学博士。新潟大学医歯学総合病院、立川綜合病院での勤務を経て2021年開院。生殖医療を中心に手掛け、男性不妊治療にも注力している。










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