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明日野家が聞く・健活インタビュー 「オーバードーズ」

 ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。

 明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはず。


薬の摂取 生きづらさ主因 命大切に

明日野家が聞く | にいがた健康寿命 | 新潟日報

 

 若者を中心に市販薬を過剰に摂取して、健康を害することが社会問題となっています。今回は「オーバードーズ」について、新潟薬科大学薬学部の城田起郎助教に体に及ぼす影響や対策について聞きました。

              (明日野歩)




 



しろた・たつろう



 新潟薬科大学薬学部卒業後、同大大学院を経て、2009年から鹿児島県で薬務行政に従事。13年、新潟薬科大学薬学部に着任。17年、新潟大学大学院を修了し、22年4月から現職。薬剤師。博士(理学)。



 

―「オーバードーズ」って何ですか?

 

 オーバードーズ(OD)とは、処方薬や市販薬を過剰摂取することです。近年では、若者による市販薬の過剰摂取が増えており、今や一部の市販薬は若者の薬物乱用に使用される薬物として最も多いものと化しています。国立精神・神経医療研究センターの「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」によると、過去1年以内に市販薬の乱用経験がある高校生の割合は1・6%。高校生の約60人に1人、つまり2クラスに1人の割合で市販薬の乱用経験者がいる計算です。すなわち、全国どの家庭・学校でも起こり得る身近な問題で、喫緊の対策が求められています。

 



―市販薬ODをしてしまうきっかけは?


 興味本位で行うケースもあるようですが、現状では、「生きづらさ」を背景としたケースが多いようです。生きづらさを抱えた若者が、それを乗り越える手段の一つとして市販薬ODを行うというケースです。これをしかると逆効果。多くの場合、「生きづらさ」を背景としてやっているので、怒られるともっとつらくなり、逆にODを助長したり、自殺を含めた別の自傷行為などに走ったりする恐れがあります。見方を変えれば、市販薬ODを行うことで、一時的に生きづらさから逃れることで、自殺目的ではなく、むしろ、生きるために市販薬ODを行う、という解釈すらできます。ですから、周囲が強制的にODをやめさせるという対処法については注意が必要です。市販薬ODをやめさせるには、OD当事者への周囲のサポートも大事ですが、専門家や支援機関からの支援も欠かせません。





―市販薬をオーバードーズするとどうなるの?


 ODによく使用されている市販薬の危険な身体症状として、けいれん発作や目まい、幻覚、錯乱状態、呼吸困難などが出現する可能性があります。どんな症状が出るかは薬の種類や量、個人の健康状態などによります。

 ODをすると、一時的に生きづらさから逃れられる気持ちになるかもしれませんが、生きづらさは解決されないので、薬が切れるとまた繰り返してしまう。これにより、当然、中毒症状が出ることもありますし、依存症になるとODをした医薬品の成分が体内から抜ける「離脱症状」で、逆に不安感を募らすこともあります。市販薬には複数の成分が入っている物も多いため、より強い離脱症状も想定されます。

 また、たとえ1回のODで死ななくても、ODを繰り返すことで多臓器に深刻なダメージを与える恐れがあります。これが原因で、間接的にODによって重度の健康障害を引き起こし、死に至る可能性すらあるので、やはりODは当然危険な行為です。



―もし友だちがODしていたら、どうすればいい?


 身近な人が相談に乗ることも大事ですが、適切な支援機関につなげてほしいです。

 強制はせず、量を減らせないか話すとともに、支援機関に相談できないか聞いてみてください。もし、本人が支援機関への相談を拒否した場合には、周囲の方々だけでも、まずは各県に設置されている精神保健福祉センターなどの支援機関に相談してください。

 また、厚生労働省のサイト「まもろうよこころ」もお勧めです。電話とSNS、各相談窓口一覧が出ます。「まもろうよこころ」この7文字さえ覚えておけば、相談先一覧にたどり着くことができます。一覧にたどり着ければ、万が一、相談窓口が混み合っていても、別の相談先に連絡することができます。生活困窮や法律などの相談窓口一覧もあるので、大人も活用できます。

 なお、市販薬は違法薬物ではないことから、ODを行っていることに当事者の周囲が気付きにくく、周囲が気付いた頃には、当事者が依存症となっていることも想定されます。そのような場合には、各県に設置されている薬物の依存症専門医療機関への受診をお勧めします。依存症専門医療機関は、専門性を有した医師らが依存症に関する専門的な医療を提供できる県が指定した医療機関です。

 


―周りのサポートが大切なんですね! 


 誰でも市販薬ODの当事者あるいは支援者になる可能性があります。1人でも多くの方に現状を認知してもらい、当事者たちを支援機関などにつなぐサポーターになってほしいです。また、当事者だけでなく、家族や学校関係者への支援も必要な場合があります。サポーターが多ければ多いほど、当事者を直接的、間接的に支援することができます。社会全体で連携して支援していくことが大事なのです。したがって、この市販薬ODの問題に完全に関係ないという人はいないのです。

 自転車の練習で、最初は大人が自転車の後ろを支えますが、最後には時間がかかっても大人が手を離しても子どもは自転車に乗れるようになります。市販薬ODの問題も自転車と同じような感覚で、日ごろから当事者を1人にせず、周囲が連携して彼らの自立を支援することが大事だと思っています。

 つらい思いをした子は、つらさを経験しているので忍耐強いケースもあり、将来社会ですごく活躍するのではと思います。周囲の支援次第で、子どもたちはいくらでも成長します。そういう子たちを救い、精鋭部隊にすることも少子化の中で大切だと考えています。



※オーバードーズをさらに詳しく知りたい方はこちらのQRから


 

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