ちょっと気になるあんな病気、こんな症状ー。
明日野家の面々が県内の医師を訪ね、病気の特徴や治療、予防のポイントについてインタビューしてきました。明日からの健活にきっと役立つはず。
男女ともに多くを悩ます「国民病」
友達との会話の中で「腰が痛くて困る」という話がよく出ます。腰痛に悩む人は老若男女問わず、多そうです。対策や予防法について新潟県理学療法士会会長でもある新潟医療福祉大学リハビリテーション学部の佐藤成登志教授に聞きました。
(明日野寿一)
さとう・なりとし 新潟リハビリテーション専門学校理学療法学科主任、新潟リハビリテーション病院理学療法科主任などを経て現職。専門理学療法士(教育、運動器、スポーツ)。新潟県理学療法士会会長。
腰痛に悩む人は多いですが、どんな原因がありますか?
腰痛は腰部を主とした痛みや張りなどの症状の総称です。厚生労働省の2022年国民生活基礎調査では、腰痛の有訴率(自覚症状がある人)は男女とも1位で、国民病と言ってもおかしくありません。
レントゲンやMRIなどの画像と症状を聞き診断しますが、さまざまな要因で発症します。骨の間にある椎間板が変性し、飛び出て神経に当たり痛みが出る「椎間板ヘルニア」や、骨の神経の通り道が狭くなって痛みやしびれが出る「狭窄(きょうさく)症」など原因が特定できるものを「特異的腰痛」と呼びます。ただ、腰痛全体の85%を占めるのは画像と症状が一致せず、原因が特定できない「非特異的腰痛」です。
腰痛になりやすい人や、高齢者がなりやすい腰痛のタイプはありますか?
腰痛は加齢とともに増えますが、職業とも関係があります。長時間同じ姿勢で座っている事務職や運輸業、前かがみで作業することが多い看護職、介護職、清掃業の人に多い傾向があります。
前かがみになったり、物を持ち上げたりすると、腰の後ろの筋肉の内圧が上昇。筋肉が硬くなり血流が悪くなります。腰が痛くなる人は、痛くない人と比べて筋肉量が少なく、動作時に過剰に使ってしまうため、筋肉が疲労して痛みにつながることがあります。加えて、心理社会的ストレスは痛みを長引かせます。運動不足や喫煙、肥満も腰痛の危険因子。適度な運動と禁煙、体重管理を心掛けましょう。
また、高齢者は筋肉量が減り骨の変形が進むため、腰が引けて前かがみになる「後弯症」という腰の曲がり方が多くなります。前かがみになるので骨の前側に圧がかかり、圧迫骨折を引き起こすほか、椎間板に強いストレスがかかったり、腰の筋肉の血流が低下したりして、腰痛の要因になります。
腰痛は予防できますか。特に、高齢者にお勧めの運動などはありますか。
長時間の同じ姿勢のほか、前かがみや物を持ち上げるなど、腰に負担のかかる動作はNGです。生活の中で「痛みの借金」に注意しましょう。負担のかかる作業をした後、そのままにして翌日も同じ動作をすれば負担が蓄積され、痛みが出てきます。腰に悪い動作をしたらリセットするケアをし、借金を増やさないことが大切です。
腰痛予防には、股関節と腰椎を結び、背骨周りを安定させる大腰筋などの筋肉を、まんべんなく鍛えることが重要です。ストレッチで痛みがある部分を無理に伸ばすと、筋肉は傷つきます。まずは筋肉を緩めましょう。
大腰筋を鍛える場合、椅子に座り、へそから約10㌢外側のおなかを両手で押しながら片脚ずつゆっくりと持ち上げるのがお勧め。左右交互に1回5~10秒を10回ほど行います。その後は体を後ろにそらして腰(股関節)を伸ばします。丁寧に緩めて柔軟性を保つことで、筋肉を傷つけずに伸ばせます。仕事などで腰に負担のかかる動作をしなければいけない時は、15分に1回程度、リセットしてください。朝方に痛くなる人はアイシングも有効です。痛みが改善してもケアは継続しましょう。やめると再び借金が蓄積し、痛みが出ます。症状に合わせていろいろな運動があるので、専門の医師や理学療法士に聞き、自分の体について知ることが大切です。
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