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開業医の役割とは


 開業して17年になります。地域の中での開業医の役割について思っていることを話したいと思います。私は、元々外科の医者ですが、普段の一般診療の内容はほとんど内科です。元々草間医院は明治23年に祖父の父が外科医として開業しました(当時は草間病院)。代々医業をなりわいとしていましたし親戚にも医師がいる環境で育ちました。






長岡市医師会長(草間医院院長)

                                              草間昭夫     

    

                     

 

地域に役立つ外科医を志して


 父は平成元年に亡くなる直前まで開業医として昼夜なく電話を受け患者さんに対応していました。そもそも診療所と住んでいる家が一緒で、電話番号も同じなのが当たり前でしたから当然かもしれません。深夜に呼ばれて往診で虫垂炎の手術をしていたらしく、住み込みの看護婦さんを連れて行って腰椎麻酔で手術していたと、近所のお年寄りから聞きました。深夜の小外科には母親が手伝っていましたし、ガーゼの再生、包帯の洗濯、薬の分包など家内工業のようでした。


 自宅での生活そのものが地域医療に密着していたものですから、自分もその道を選択するものが当然と思っていました。開業医にとって一般内科医としての技量が必要とされることが多いわけですが、外科的な知識と技量があれば地域のためにさらに役に立つのではと思ってしまったので外科医としての修練をすることを決めました。


 地域の開業医に求められるのは多種多様な患者を診察し専門性の高い施設に手配することと思います。そのフィルターの選択性が適正であるほど病院の負担を減らせるのかもしれません。外科医としての修練をしている間、初診から検査、診断、手術、術後管理、そして外来での経過観察と一人で一貫して患者さんと関わり合えるとともに、同時にその人の生き様、地域の歴史に接することが楽しく感じるようになりました。


 

病院とは違う開業医の役割


 そして草間医院は17年の間、閉院していましたが再開することにしました。

病院の外科医とは全く違う世界が待っていました。外来の大半は高齢者ばかりで病気の話より心配ごとの話が多い。若い人は職場でのストレスが、若いお母さんでは子育ての不安、嫁しゅうと問題、夫婦仲の問題、そんなことが胃の痛い原因だったりします。手術の必要ながん患者は一握りです。ベテランナースに相談に乗ってもらうことで解決することも多々あります。往診先では、廊下で倒れて失禁している低体温症の一人暮らし老人に対しても、医学教育や病院勤務の中でオムツ交換やシーツ交換、清拭など学んだことがない医師には途方にくれるのみでした。ここでも看護婦さんは本当にすごいと思いました。


夜間、状況によっては家内を連れて訪問します。2人ならなんとかなることも多いですから(実は飲酒していることも多いし、介護経験のある妻の方が何かと役に立ちます)。その場をしのげばあとはケアマネ、訪問看護にお願いできるということも学びました。内科だ、外科だという前に1人では何もできないことがわかりました。


少ない人数で、できることに限りがある中で、地域に出かけていかなくてはならないことが増えています。患者宅に伺うということは、1. 外来通院できなくなった方への訪問診療(状態を見て処方継続、疾病の予防)2. 多職種で患者さんに寄り添いすみ慣れた家で余生を送ることへの手助けする 3. 近所の患者で自分が訪問した方が早く方針を判断できる場合(救急隊を呼ぶか、看取るか、経過観察か)4. 検死 と思っています。そして、残念なことに現状ではどなたにでも即対応できるわけではありません。かかりつけ、よく知っている方(ご近所、親戚、友人、その家族)が限定となります。

 

信頼関係が支える地域医療

 「かかりつけ医」の鈴をつけられたからというのではなく、患者と医師の信頼関係があって、対応できるものと思いますので、家族のような友人のような関係性が広がっていく輪が地域医療を支えていくのだと思います。後方支援病院においても、患者を取り囲む多職種もお互いを思いやる輪が広がれば、皆が納得する良い地域医療ができると思っています。杓子定規なルールを作っても地域医療は成立しないのではと思っています。


さて、高齢化で亡くなる人が増えます。すみ慣れた家で一生を終えることが選択肢として選ばれることも多くなると思います。患者宅に伺い「みとり」を行うことが私たちの重要な役割となっていますが、単に死亡診断書を作成するのではなく、見守る家族の気持ちの落ち着く先を一緒に考えたり、たとえ見守る家族がいなくても患者の最後の生活に携わった人たちの気持ちがお互いに納得できるものであったりしてほしいと思います。なによりお亡くなりなった人が、こんな最後でいいかと思っていただけるようにしたいものです。


最後に、私たちの仕事は産業医、学校医、警察医と多岐に渡ります。加えて私たちの後輩指導とそして医師のあるべき姿を示し導いていく医師会の運営に携わることが地域を支えることと思っています。地域の皆様の理解を得たうえで、お互いの信頼関係を築いていけたらと思っています。

   (2023..12. 4掲載)













これから往診。

 

くさま・あきお
1957年長岡市生まれ。1983年日本医大卒業後、新潟大学第一外科入局。長岡赤十字病院で外科医として勤務の後、 2006年草間医院開院。20年より、長岡市医師会長を務める。

次回は、草間先生が県医師会理事会でご一緒しているという、新潟県医師会理事で燕市のうえだクリニック院長の上田昌博先生を予定しています。


協力:株式会社メディレボ










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