スポーツボウリング
- ma-hara3
- 11月6日
- 読了時間: 7分

(2025/11/7)
新潟県立津川病院の院長をしております原勝人です。私の趣味のボウリングの話を始めると本が一冊書けるほどと言いながら、いつも地域医療の話をしているので、今回はボウリングのお話をしたいと思います。毎年、ボウリングに熱中している医師が集結する全日本医師ボウリング大会が、10月の3連休に今年は三重県で開催されました。コロナ禍での3年間の中断はありましたが、令和5年より再開され、今回の全参加者は85人、新潟県からも私を含めた5人の選手団で参加してきました。結果は4人戦で新潟Aが準優勝、ダブルス戦で滝沢先生と塚田先生のチームが準優勝、9ゲーム年齢ハンデ込みの種目総合で私が6位入賞と、まずまずの結果でした。
県立津川病院 原 勝人院長
なぜ熱中するのか
なぜボウリングに熱中するのかという話ですが、ボウリングは習熟すればするほど世界が広がる、非常に奥行きの深いスポーツです。また、ボウリングは10ポンド以上のボールを投球するため、瞬間的には無酸素運動ですが、投球待ちの時間などを含めると、全体的には非常に優秀な有酸素運動になっています。ボウリングの運動強度は3~4メッツ程度あり、ウオーキング同等以上です。3ゲーム程度のミニ大会に参加すると、あっという間に90分くらい経過しています。80歳ぐらいまでは普通に参加できる生涯スポーツです。さらに高得点を狙うために戦略を考えながら、頭脳、上半身、下半身をバランス良く使うスポーツなのです。
ボウリングをこれから始める方のために、ボウリングの基礎的な話をしたいと思います。ボウリングのボールを投球するレーンの幅は104~106cmとほぼ1メートルです。投球する時に踏んではいけないファールラインからピンまでの距離は、野球のマウンドからホームベースの距離と同じ、60フィート、18メートルです。投球するボールの重さは16ポンド以下とルールが決まっています。一方で1本のピンは3ポンド程度あり、10本集まるとボールの質量の2倍程度あります。10本全部倒すストライクを出すためには、ボールがピンを倒す、ピンがピンを倒すという連動が必要になります。その理屈が奥深いボウリングの話の入り口になります。
いかに「5番」を倒すか

通常曲がりのないストレートボールを投げると、上手に投げたつもりでも1本だけ非常に残りやすいピンがあります。ボウリングのピンは10本が正三角形状に並んでいます。正三角形の左辺には1番2番4番7番のピン、右辺には1番3番6番10番のピンが並びます。蛇足ですが、底辺は7番8番9番10番のピンです。するとどの辺にも参加していないピンが1本だけありますが、5番ピンです。5番ピンはどこらかボールを投げてもピンの壁に守られています。それゆえに5番ピンはキングピンとも呼ばれ、スポーツボウリングの理論は5番ピンを倒すことから始まります。
右投げの人がボールを投げて1番ピンをヒットした後、さらに5番ピンをヒットすることを考えた時に、1番ピンを右からヒット、右方向に軌道を変え今度は3番ピンをヒット、3番ピンを左側からヒットし、今度は左方向に軌道を変えると、5番ピンに到達することになります。この連動が起こるとボールは1番3番5番9番とジグザクにあたりピンを倒す。1番2番4番7番はピンとピンの連動により倒れ、3番6番10番、及び5番8番もピンとピンの連動により倒れる。これがすなわちパーフェクトストライクの構図です。
パーフェクトストライクを出すためには、レーンに平行にボールを投入するのではダメで、レーンと平行に対して左方向に3~6度の入射角を持って、1番ピンを右側からヒットすることが必要である、と数多くの計測から実証されています。この3~6度の入射角はファールラインの右端からストレートボールを投入するのでは達成できず、スポーツボウリングの選手がボールとレーンの摩擦を利用してフックボールを投げる理由になります。左投げの方の場合はミラーイメージで考えていただければ良いのですが、右方向に3~6度の入射角が必要になります。
オイルの役割
ボウリングのレーンには二つの目的から、オイルが塗られていますが、一つにはレーンとボールの摩擦からレーンを保護する目的、もう一つにはレーンの序盤、中盤ではボールを直進させ、終盤になってボールが軌道を変えるフックボールを可能にする目的のためです。ファールラインからピンまでの距離60フィートと書きましたが、通常はファールラインから42~45フィートにオイルが塗られています。また、通常オイルはレーンの中央部分に厚く両端は薄くなっています。回転のかかったボールをアウトサイドに投球すると、オイルの薄くなった部分で曲がってインサイドに戻ってきます。一方回転のかかったボールでもインサイドに投げると厚いオイルでそれ程曲がりません。アウトサイドに投げてもインサイドに投げてもピンに到達する時には同じ地点を通過するというトリックレーンが成立します。われわれアマチュアボウラーは多少なりとも、この性質を利用して高得点を狙っています。
ボールの回転、軌道がカギ
前述した3~6度の入射角を目指すボール側の要素としてボールスペックには、ボールの質量、表面素材、表面加工、慣性モーメントなどがあります。まず、ボールの質量は16ポンド以下と決められています。軽すぎるとピンに負けてしまいますが、適正な質量は投球者の体重の10分の1程度とされています。表面素材には、プラスチック、ウレタン、リアクティブウレタンなど摩擦係数を上げるために開発されてきました。近年では直進性と曲がり始めてからの曲がりの強さの両立が求められています。表面加工も様々で、ポリッシュ、500番から4000番のサンデイングなどがあります。
慣性モーメントは重要で、ボールは床面からの摩擦力を得て軌道を変えることになりますが、慣性モーメントの低いボールであれば、摩擦により角運動量や回転軸が変化しやすくなります。ボールの立体構造上、慣性モーメントのX軸とY軸で数値を変えることが可能です。ボールは遠心力により慣性モーメントの高い軸での回転に移行しようとします。この回転軸の移動の性質も利用してボールの曲がりをスムーズにしています。更に近年はZ軸の数値も違うボールが開発されています。これにより左に曲がりやすいボール、右に曲がりやすいボールが生まれました。お買い求める場合にはご注意いただきたいと思います。
ボールを投げる投球者側の要素としては、投球スピードとボールの回転数、また回転軸と投球方向との角度のずれアキシスローテーション、回転軸と水平方向との角度のずれアキシスチルトがあります。これらは投球者によって様々で、投球者の個性を生み出します。
ここまでが総論です。その日のレーンコンデションを攻略するための各論は、その日のコンデションごとにあり、正解も1つではありません。なるべく結果の出やすい方法を模索しながら、また生まれた結果から修正してゆくというアジャスト能力も重要になってきます。そのためにボウラーは日々、頭脳をフル回転させながら、上半身、下半身をバランスよく使っています。ボウリングは正に医師向きのスポーツであります。われわれ新潟市医師会ボウリング部は第2第4金曜日の午後8時から黒埼グランドボウルで活動していますので、ボウリングに興味を持った方はぜひ見に来ていただきたいと思います。
(2025.11.7掲載)

【略暦】はら かつひと 1964年上越市(旧吉川町)出身、90年自治医科大学を卒業、新潟大学第二内科(現呼吸器内科)に入局。臨床研修の後、新潟県内の県立新発田病院、町立相川病院、県立小出病院、県立妙高病院、県立吉田病院などで勤務。2001年に論文博士を取得。10年7月新潟県立津川病院内科部長、12年4月同院診療部長、13年4月同院院長、現在に至る。
次回は新潟大学医歯学総合病院総合診療科の長谷川隆志先生です。原勝人先生が論文博士を取得したときの指導医です。長らく新潟県の成人気管支ぜんそく治療をリードされてきました。近年は医師研修センター長としても活躍されました。
協力:株式会社メディレボ


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