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7/16 | にいがた健活講座「元気に夏を乗り切る!~熱中症の予防と応急処置~」

にいがた健活講座「元気に夏を乗り切る!~熱中症の予防と応急処置~」

新潟市民病院 救命救急・循環器病・脳卒中センター

佐藤信宏副センター長

 

 さとう・のぶひろ 新潟市出身。新潟大学医学部卒。東京大学大学院公共健康医学専攻、新潟大学医歯学総合研究科博士課程修了。新潟市民病院、福井大学医学部付属病院、オーストラリアMonash University留学を経て、2020年から現職。専門は救急医学。


 

屋内で数日かけて発症するケースも


 いきいき健やかに暮らすためのヒントを探る「にいがた健活講座」が7月16日、新潟日報メディアシップ(新潟市中央区)で開かれました。新潟市民病院救命救急・循環器病・脳卒中センターの佐藤信宏副センター長が講演し、熱中症の仕組みや予防のポイントなどを解説しました。


 私たちは暑さで体温が上昇すると、皮膚温度を上げたり、汗をかいたりして熱を外へ逃がします。熱中症は、体温が上昇しても汗や皮膚温度で調整できず、体のバランスが破綻した状態のことです。

 熱中症を引き起こす条件には気温や湿度などの環境と、睡眠と食事といった体の状態、慣れない運動などの行動が挙げられます。暑い屋外で運動したり、働いたりして、数時間で急激に起きるイメージですが、実は高齢者や子どもが、屋内で数日かけて徐々に発症する熱中症もあります。近年の熱中症による救急搬送状況を見ると、65歳以上の高齢者が半数以上、「住居(敷地内全ての場所を含む)」での発生が4割を占めています。


意識障害あれば救急要請を


 熱中症は、大まかに3つに分けられます。

 重症の熱射病は、高体温や意識障害などが見られ、多臓器障害を引き起こして命に関わります。すぐに救急要請をしてください。

 中等症の熱疲労は、熱射病の前段階。頭痛や嘔吐(おうと)、ボーッとしているなどの症状があり、平熱でも起きます。水分が取れていないと重症化する恐れがあるので、病院受診が必要です。中等症でも高齢者は入院によって筋力や認知機能が低下し、自宅退院困難になることも。健康寿命を縮める要因になります。

 軽症の熱けいれんは筋肉のけいれんで、若い人に多く見られます。塩分と水分を補充し、涼しい所で安静にしましょう。



エアコン上手に使って予防


 予防法のポイントは、エアコンを上手に使うことです。新潟市の7月の平均気温は、この40年で上昇しています。加齢で体温調節機能は着実に低下しています。若い頃は平気だったとしても、今はエアコンが必要だと考えます。

 扇風機は、気温や湿度が比較的低い日であれば、風で体温を下げられます。ただ、気温や湿度まではコントロールできません。気温と湿度が高い時は、エアコン使用がベスト。エアコンは寒くて苦手という人は、湿度を下げるだけでもOK。1枚羽織ってもいいのでエアコンを使い、温度と湿度を調節することが、熱中症予防には重要です。

 熱中症は他の病気との見分けが難しいですが、新型ウイルスとの違いは、喉の痛みや咳です。熱中症の症状にこれらはありません。また、風邪とは違うので熱中症に解熱剤は効きません。むしろ風邪薬の服用が害になることもあるので注意が必要です。

 マスクは空気中のウイルスを吸い込まないためではなく、もし自分が感染していた場合、自分の唾液などを拡散させないために着けるものなので、屋外で人と話さなければ不要です。ただし屋外でも、集まってワイワイ話しながらバーベキューをする場合はリスクがあります。屋内か屋外かより、人と接して相手と近距離で会話するかでマスクの着脱は判断

した方がいいでしょう。


涼しい場所で体を冷やして


 予防には睡眠や食事などをしっかり取ることも大切です。通気性のよい寝具などを工夫し、しっかり体を休める環境をつくりましょう。食事では1日に必要な水分量の半分程度が取れると言われ、塩分摂取もできます。朝食を抜くのは熱中症リスクを高めます。利尿作用があり、脱水になりやすいアルコールの取り過ぎにも注意が必要です。

熱中症の対応法で大切なのは、涼しい場所への避難。エアコンが効いた涼しい所に患者さんを避難させてください。そして、冷やす。熱は体がぬれて、それが蒸発する時に奪われるので、体をぬらして風を送るのもいいでしょう。ただし、氷水を手足にかけると冷たすぎて血管が縮まり、逆に熱が逃げないので注意を。首や脇の下など太い血管を冷やすこともいいです。休ませ、水分・塩分を補給してください。

 

実践編・119番体験


 実践講座では佐藤信宏副センター長が「119番体験」と題し、ボランティアとして参加した新潟市消防局のスタッフとともに、119番通報した際の流れや注意点などを解説しました。参加者は、熱中症と交通事故を事例に通報のやりとりを体験し、救急車が向かう先の住所や目標物、患者の容体など伝える大切さを学びました。


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