がんの早期発見のためには、定期的ながん検診が重要であることは言うまでもありません。しかし、皮膚がんについてはどうでしょうか? 胃がん、肺がん、大腸がんなどの内臓にできるがんを見つけるにはレントゲンやCT、内視鏡などの検査が必要ですが、身体の表面に発生する皮膚がんは必ずどこかであなたの目に留まっているはずです。そうです、皮膚がんは自分で見つけるのです。
新潟県立がんセンター新潟病院 副院長/皮膚科
竹之内辰也
皮膚がんの代表格メラノーマ
皮膚がんは希少がんの一つに分類されますが、人口の高齢化を背景に増え続けています。皮膚がんの代表格で、俗に「ホクロのがん」と呼ばれているものがメラノーマ(悪性黒色腫)です。メラノーマは従来から抗がん剤が効きにくく、数あるがんの中でも特に悪役扱いされてきました。ところが、最近10年間で免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの有望な新薬が次々と導入され、メラノーマの治療成績は向上しました。しかしながら、薬物療法が進歩した現在でもメラノーマによる死亡は減っていません。
大きさや形の変化に注意が必要
皮膚がんは体表に生じますので、患者さんやご家族は早い段階でその存在に気が付いているはずです。それが進行して大きさや形が変わっていっても長年放置してしまうのは、皮膚がんという病気に対する認識がないからです。いつまでも治らないイボや変化していくホクロを見た際に、「もしかしたら皮膚がんかも」と疑うことが受診の動機となり、早期診断・早期治療につながります。
早期発見に向けたキャンペーン活動
以前から、皮膚がんの認知度を高めるための社会啓発活動が必要と感じてはいましたが、なかなか実行には移せずにいました。その状況を変えたのがコロナ禍であり、受診控えによって2020年の当院の皮膚がん新患数が2割減少したことに強い危機感を覚え、皮膚がん早期発見のためのキャンペーン活動を本格的に始めました。一部の製薬企業、新潟日報社、新潟県健康づくり財団にも協力を頂き、新聞への皮膚がん広告と啓発記事の掲載、県内郵便局への啓発ポスター掲示、行政機関誌への投稿など、メディアを利用した一連の皮膚がん啓発キャンペーンを行いました。さらには、持続可能な設置・配布型の広告手段として皮膚がん啓発のリーフレットを作成し、県内の皮膚科クリニックやがん拠点病院、検診施設、市内の保険薬局などを中心に、これまで9000部以上を配布しました。
1997年にがんセンターに赴任してから早や26年が経ち、自分の勤務医生活もあと残すところ数年となりました。長時間の外来診療や手術に際しては気力・体力の衰えが隠せなくなってきましたが、今回のキャンペーンのように別の形での社会貢献ができるよう、総決算としてもうひと頑張りしたいところです。
(2024.3. 5掲載)
たけのうち・たつや
1988年東海大学卒、新潟大学皮膚科に入局。1997年に県立がんセンターに赴任、2010年に情報調査部長、2017年から副院長。専門は皮膚腫瘍・皮膚外科で、日本皮膚外科学会の理事長を務める。新潟市内の皮膚科泌尿器科医院の3代目でありながら、なぜか実家をたたんで勤務医を続けてしまった。
次回は竹之内先生が新潟高校で同級だった加藤公則先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科 特任教授)を予定しています。
協力:株式会社メディレボ
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