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生活のバイタルサイン

血圧など変化に注目


 皆さんが病院や診療所にくと、血圧を測ったり、体温を測ったりすることと思います。血圧体温は、バイタルサインといわれるものの一部です。バイタルサインとは、生命兆候といい、血圧、脈拍、体温、呼吸、意識レベルのことを言います。何らかの疾患にかかったときや、生命に危険が生じたときにはこのいずれかに問題をします。重篤な疾患の治療中、手術中にはこのバイタルサインを常に見ています。血圧計、体温計はホームセンターでも購入することが可能であり、すでに自宅で測定されている方もいらっしゃると思います。  

高血圧が、心臓や脳などの疾患つながることは皆さんご存じとおもいます。

 さて、病院では、医師、看護師のみならずさまざまな職種が関わり、疾患の治療を行い、それぞれの方の生活に戻れるような支援を行っています。脳卒中や思わぬ事故など、疾患によりその後遺症を抱えた方は、それまでの身体状況から変化が生じ、何らかのケアが必要となることもあります。入院という特殊な環境から、今までの生活環境や新しい生活環境へ引き継いでいくことを行っています。その時に考えていかなければならないことが、表題の「生活のバイタルサイン」になります。


新潟県立柿崎病院 院長 

太田 求磨 

                 

 

食事と排せつと睡眠



 具体的には、①食事②排尿・排便③睡眠になります。

 皆さんは、適切な量と質の食事がとれているでしょうか。生活習慣病が食事、運動などと関連があるのは知られていて、食事をコントールすることで病気を予防、改善されている方もいるでしょう。糖質制限などは近年話題に上る食生活への取り組みになります。日本が高齢社会になっていることもあって、高齢者のフレイル・サルコペニアを予防する観点が注目され、たんぱく質の摂取が大事といわれています。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、中学生と75歳の方の1日のたんぱく摂取量は同じ量が勧められています。また、味を感じづらく、塩分の多い食生活になっていないでしょうか?夜勤などで交代勤務の場合は食事パターンが乱れがちになります。糖尿病の患者さんでは、1日2食と1日3食の方を比べると、1日3食のほうが、睡眠の質が良いという研究も報告されていて、食生活にはさまざまな影響が及びます。食欲低下で発見される疾患もありますし、ストレスで食欲が低下したり、逆に過食になったりすることがあり、精神状態が食生活に反映されることがあります。

 排尿、排便など気になっているけど相談できない方は多いのではないでしょうか。尿が近い、間に合わない、尿臭が気になる、夜のトイレの回数が多くて困るなど生活には支障をしているけれども、なかなか相談できてない方も多いかもしれません。排便に関しても便秘気味になってきたなどの変化がないでしょうか。排便、排尿などの症状はその症状が悪化傾向にないかどうかが重要です。以前に比べて悪くなっていると感じているようであれば、かかりつけの医師へ相談されるとよいでしょう。

 最後に睡眠です。皆さんは毎晩8時間寝ようと思っていないでしょうか。人はおおむね16時間起きていると眠れる状態になってくると考えられています。長時間の昼寝などの仮眠は、この自然な眠気が訪れるのを妨げるので避けるべきです。また、ベッドでの滞在時間が1日に8時間以上になると、筋力低下や認知機能低下に結びつく可能性があるとも言われています。また、60歳と80歳では、薬の半減期(血液中の薬の濃度が半分にになる時間)が、長時間薬剤が体に残りやすいと考えられていて、睡眠導入剤を使用して、就寝されている方は注意が必要です。多くの薬剤を長年服用している方では、75歳くらいになったら一度見直すことも考慮したほうがよさそうです。

 これら生活のバイタルサインを振り返ってみると、健康な生活をより長く送ることができるのではないでしょうか。 



安心な生活のために

 急性期の治療を中心に行う病院、リハビリなどの回復過程を担う病院、医療ケアを多く必要とする療養する病院、かかりつけ医としての役割を果たす病院など病院にはそれぞれで役割を分担連携しながら地域への医療を提供していますこれが今の医療体制になっています。私のいる病院では、この数年で治療の回復過程を担い生活に戻っていけるためのサポートをすることが中心の病院に変化してきました。高齢社会が加速していくこれからは、地域が必要とする役割を果たすために変化することも大事なことであろうと思います。

最後に、医療というものは、その地で安心して生活するために必要なものであると考えていますので、適切で安全な医療をこれからも提供していきたいといます。



【写真】県立柿崎病院で退院を支援しようと発行する「柿崎退院支援モデル」。略して「柿モ通信」                        

                                   (2024.11.8掲載)


 
略歴 おおた・きゅうま
 1997年3月、自治医科大学卒。2003年4月、県立津川病院内科医長・産業医、2006年3月、新潟大学医歯学総合病院地域医療教育支援コアステーション助手、2017年4月から県立柿崎病院院長。日本老年学会専門医。

 次回は太田院長が以前ともに仕事をし、住民の方々と地域の健康をつくり上げ、患者さんに寄り添う医療活動をしている魚沼市立小出病院の布施克也院長が登場します。



協力:株式会社メディレボ









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