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“Think globally, act locally.”    =標準を見据え、地域で行動=

  • ma-hara3
  • 2月5日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月7日


 関川村は新潟県の北東に位置し山形県小国町に接する自然が豊富な村です。人口は4,691人、高齢化率は45.5%(2024年12月末)であります。昨今は、村の大蛇伝説「大里峠」と1967(昭和42)年に起きた羽越水害の供養とをテーマに1988(昭和63)年から行われてきた「大したもん蛇まつり」がとても有名になりました。








関川村国民健康保険関川診療所 

        所長 平田丞

                 


プライマリ・ケアとは


 私は現在この村の村営の診療所で、プライマリ・ケアを中心とした医療に携わらせていただいています。

 プライマリ・ケアとは「患者さんが抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族および地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである(1996年、米国国立科学アカデミー)」と定義されています。やや難しいですが、要するに、かかりやすくて、なんでも診てくれたり相談に乗ってくれたりして、いろいろな職種の方々と協力しながら、継続的に、そして責任を持って対応してくれる医療のことです。細分化された各分野の専門医がそろい、高度で専門性の高い検査や治療を行うことが難しい地域にこそ、そんな医療(プライマリ・ケア)が身近にあってくれたらとても安心だと思います。

 日々、診療所では、関川村と近隣の市町村からの子どもたちから成人・ご高齢の方々まで、それぞれのライフステージに特有の多くの問題について考え、取り組む機会をいただいています。

 すなわち、予防接種、風邪などの感染症、高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病、心臓・呼吸器・消化器・腎尿路系の問題、皮膚や目、耳と鼻に関わること、こころに関わること、認知症、外傷(擦り傷、切り傷、捻挫、骨折・脱臼、頭の外傷、火傷等)や整形外科の問題などなど多岐にわたりますが、診察室だけでなく、往診や訪問診療もできる限り行っています。さらに、村の保育園の園医や中学校の学校医、村の行事の救護係などの機会もいただいています。診療所で対応が難しい場合は近隣の医療機関に検査や治療をお願いしています。

 


地域の医療に重要な協力と勉強


 私たちがジャンルの広い医療をカバーするために特に欠かせないと感じていることが協力と勉強です。

 協力とは多職種連携と言われていることです。患者さんとご家族からのご希望・ご意向を傾聴し応じさせていただくためには、いろいろな視点が大切となります。医師、看護師、職員はもちろんのこと、状況に応じて当村の保健師、管理栄養士、ケアマネージャー、ヘルパーさんたちと共に考え知恵や技術を持ち寄って、抜けの無い最適な医療の達成を目指します。

 勉強については申すまでもなく、日進月歩の医療をずっと学んでいかなければなりませんし、絶えず変化する医療を取り巻く環境・社会情勢にも遅れずついていかなければなりません。地域のプライマリ・ケアでは、できるだけ幅広い領域の知識や技術を学び身に付けることが大事であり、そして、学んだことは、標準的なことでも、地域にかなった形にするために工夫や協力が欠かせないと感じています(Think globally, act locally.)。



日々重ねる感謝と学び


 地域で医療に携わらせていただくことは身が引き締まることであります。と同時に、私たち医療人にとって大きな喜びでもあります。専門科に特化しない幅の広い領域の診療を通じて、その都度新しい気づきと学びの機会をいただいています。乳幼児から成人・ご高齢の方々まで対応させていただくことで、人間の生理学的な変化や人生観の変遷などを実感的に経験することができ、と同時に、変化や変遷に応じた最適な医療の提供を考える貴重な機会となります。多職種の方々や近隣の医療機関と連携させていただくことで豊かな医療の提供につながることを実感し、それぞれの職種が担う専門性に対する尊敬の気持ちをあらたに感じることができます。

 このような、受診して下さる方々、地域に住まわれている方々、共感的で真摯(しんし)に協働してくれるスタッフや多くの職種と高次医療機関の方々からもたらされる恵みによって、日々、私たちが「困っている方々のお役に立つ存在でありたい」と願う、その初源的な志を、常に新しいものとして感じることができます。感謝の気持ちを持って、学び、考え、連携しながら、安心の医療を提供し続けていくことが私たちの役割であると考えています。

 


【写真】2021年から2024年の関川村の四季。7枚とも平田さん撮影

                                      (2025.2.6掲載)


略歴 ひらたじょう

 関川村出身。1991年新潟大学医学部卒。1996年東京大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士(分子生物学)。北里大学病院(眼科学)、東京大学整形外科学教室等を経て、公益社団法人地域医療振興協会・西吾妻福祉病院にて総合診療を研修した後、2018年から現職。日本専門医機構整形外科専門医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医、指導医、日本医師会産業医、認知症サポート医、日本糖尿病協会登録医、新潟県糖尿病・CKD協力医、緩和ケア研修会修了、臨床研修指導医。
 次回は、村上市・瀬賀医院の瀬賀弘行(せがひろゆき)先生です。
 平田先生によりますと、瀬賀先生のところには近隣の方々だけでなく遠方からも多くの方々が通院しています。ご多忙でも瀬賀先生は多くの方々の在宅医療に非常に熱心で、患者さん、ご家族の方々、そして地域の方々から大変信頼されています。
 「いつもご指導をいただいています。先生のさまざまな臨床場面における適切なご判断、広く深い学識、そして豊富なご経験と人々に対する思いやりに感銘を受け、いつも尊敬申し上げております」(平田先生)

協力:株式会社メディレボ







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