新しい疾患との出合い -IgG4関連疾患
- 15 時間前
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(2026/3/5)

皆さん、IgG4(アイジージーフォー)関連疾患という言葉は聞いたことがありますか? なじみのない病名ですよね。実はこの疾患は21世紀になって日本から発信された新しい病気なのです。以前、自己免疫性膵(すい)炎、後腹膜線維症、ミクリッツ病、などさまざまな名前で呼ばれていたものが、実は同じ病気のいろいろな部分をみていた、ということが分かり、それらをまとめて「IgG4関連疾患」という名前が付けられました。私は長岡赤十字病院(長岡日赤)にいたことで、この新しい疾患の誕生に立ち会うことができ、そして現在、日本、世界の研究者と一緒に臨床、研究をさせてもらっています。新潟県の一般病院にいながらにしてそんな素晴らしい出会いがあることにあらためてびっくりです。
長岡赤十字病院
リウマチ膠原病内科部長兼リウマチセンター長
佐伯 敬子先生
そもそもミステリーが好き
私が専門としている“膠原病(こうげんびょう)”は、その多くに、“自己免疫”が関与し、関節、筋肉含め全身のいろいろな臓器に病気が起こる疾患の総称です。一番多い膠原病は関節リウマチですが、まれな疾患も多く、いわゆる難病に指定されているものも多いです。私は医学部卒業後、腎臓・膠原病内科に入局し、中でも膠原病を専門にしようと決めましたが、大学で膠原病の勉強をしっかりやる前に子供が小学校に入学となり(小1の壁)、実家のある長岡の病院に赴任させていただきました。長岡日赤では膠原病内科は私がはじめての医師であり実力はないままに“膠原病内科医”を名乗ることとなりました。とにかく頼れるものは自分が調べたことのみ。もともとミステリーが大好きな私は、この“自分で調べる”はある意味大変面白く、診断、治療についてかなり深掘りしてやってきました。そんな長岡日赤に赴任したばかりの頃、両側涙腺、唾液腺腫脹と間質性腎炎を患った60代の男性2人に遭遇。シェーグレン症候群(SS)という、涙腺や唾液腺に自己免疫により炎症が持続して涙や唾液が減少(ドライアイ、ドライマウス)する疾患に間質性腎炎が合併する事は有名だったので、SSに伴う間質性腎炎、といったんは診断しましたが、いや待て、そもそもSSは圧倒的に女性に多い疾患だ、また乾燥症状というより腺が腫れているのが目に付く、多くのSSにみられる抗SSA/SSB抗体という自己抗体が陰性だ、と違和感を覚えました。そこでSS、男性、腺腫脹、SSA陰性などと掛け合わせて検索したところ、“ミクリッツ病(MD)”という病名に遭遇しました。MDは1888年にミクリッツ先生が両側唾液腺、耳下腺、涙腺が持続的にはれてほかに原因がないもの、として発表しましたが、1953年に米国の有名な病理の先生が、組織を見るとMDとSSは同じだ、MDはSSの一亜型にすぎない、と結論づけ、それ以来欧米ではMDという言葉は消滅しました。しかし日本にはMDに注目している人もいたのです。
IgG4が関係する新しい疾患の気付き

金沢医科大学の血液免疫内科元教授の菅井進先生(SSがご専門)もそのお一人で、相談したところ「これは面白いですね」と誘っていただき2003年のSS研究会で発表しました。そして、まさにその会場で、札幌医科大学から、SSとMDの組織は普通の染色では同じにみえるがIgG4免疫染色という特殊な染色をやるとMDだけにIgG4陽性の細胞が多く見られる、また血液検査でもMDだけ血清IgG4が高値であり、両者は異なる病気である、との発表がありました。これだ!ということで、帰ってから早速二人の男性の血液と組織を調べたところ血清IgG4高値で腎臓にはIgG4陽性の細胞がたくさん見られました。実は血清IgG4は、自己免疫性膵炎という特殊な膵炎で上昇していることが信州大学から2001年に発表されており、その後の研究で自己免疫性膵炎もMDもIgG4が関連した同じ病気の、膵病変と涙腺、唾液腺病変であり、私が経験した間質性腎炎もその病気の腎炎だったと判明しました。こうして「IgG4」に気付き、興味をもったさまざまな専門家(消化器、リウマチ、腎臓、呼吸器、眼科、放射線、病理..)が一緒になって症例を集めて、研究し、ついに新しい「IgG4関連疾患」を日本から世界に発信したのです。私は主にIgG4関連疾患の腎病変について、新潟大学腎膠原病内科の協力をいただき論文発表させていただきました。今やIgG4関連疾患は世界でも認められ、ハーバード大学リウマチ科教授Stone先生を中心に国際シンポジウムも開催され、世界のIgG4愛好家(?)により病態解明、治療について進歩し続けています。
どこにいても世界とつながれる
長岡日赤に赴任して以来、たくさんの患者さんに出会ってきました。分からないことは自分で調べ、それでもわからないことがあったら…。もしかしてそれは全く新しい発見につながる一歩かもしれません。そして論文として発表すればどこにいても世界とつながることができるのです。内科医にとって“一例一例丁寧に診る”事はとても大切なことです。そんな症例発表の基本となる内科学会地方会(信越地方会)の大会長を仰せつかり、2026年6月13日に長岡で開催させていただくこととなりました。大変名誉なことであり、わくわくしています。
(2026.3.5掲載)


【略暦】 さえきたかこ 新潟県長岡市出身。1985年新潟大学医学部卒業。同大学第二内科に入局(腎臓・膠原病グループ)。1995年に長岡赤十字病院腎臓・膠原病内科医として赴任。リウマチ膠原病内科部長兼リウマチセンター長。専門は内科、リウマチ科、腎臓内科。
次回は現在新潟市民病院患者総合支援センター長兼産科部長の倉林工(たくみ)先生です。山本先生と同じく新潟大学医学部同期です。大変誠実で信頼できる先生で、山本先生の回で紹介のあった、第28回日本骨粗鬆症学会の会長を山本先生と2人で務めます。カリスマ的山本と気配りの倉林、の最強コンビです。
協力:株式会社メディレボ


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