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月経痛のはなし


女性には、男性にはない、悩ましい3つの時期があります。(関係ないと思わず、男性はこれを理解して下さい)

 

① 月経前・月経期

② 妊娠・分娩(授乳)期

③ 更年期

 

子をもうけようとすれば、②はどうしても避けられません、夫(あるいはパートナー)の、家族の、社会のサポートで乗り切ろうというものです。せめて、どうでしょう、①と③くらいは自分で何とかしたいものです、何とかできるものです。更年期障害はホルモン補充療法でほぼ快適に過ごせるでしょう。ここでは月経の話をしたいと思います。

 



うえだクリニック院長(新潟県医師会理事)

                                          上田昌博     

    

                     

 

月経の回数が急に増えている


女性の生涯の月経回数は、昭和の戦後の頃までは50回程度であったものが、現代では450回程度に大幅に増加したと言われています。


女性の社会進出とともに晩婚や未婚化、少産や未産化が進んだ結果として、妊娠分娩回数が減少したことが、月経回数が増えた大きな理由と考えられます。


人類数十万年の歴史の中でこのように月経回数の多い時代はなかったわけで、人類史的な尺度でみれば、つい最近それがやってきたわけです。ですから人間の女性の身体は月経の回数が多いことに慣れていない、あまりにも急なことで女性の身体がついてきていない。その結果どういうことが起きたのでしょうか。


 

月経の回数が多くなると、子宮内膜症が増える


その一つが、子宮内膜症の増加です。

日本では、ここ20年で2倍以上に増加し内膜症患者は200〜400万人ともいわれています。

内膜症は疼痛、腫瘤、不妊を主症状とするホルモン依存性の病気で、20歳代後半〜40歳代前半という生殖年齢、労働生産年齢に好発します。


内膜症発生に関する代表的な説の一つに子宮内膜移植説 (月経血卵管逆流説)というものがあります。月経の度に内膜組織が卵管を通って骨盤腹腔内に逆流し、そこで増えてしまう。つまり月経の度に内膜症のリスクが高まるということです。


 

月経痛は「あるのがふつう」?「ないのがふつう」!


有経女性の3割近くに月経痛などがあるといわれていますが、これはふつうではありません。その、つらい月経の回数が大幅に増えている。


痛い、つらい、だけでは済みません。今、内膜症がなくても、月経痛を有する人は月経痛が軽い人に比べて将来の内膜症の発生リスクが数倍高いことがわかっています。もしかすると既に内膜症ができているから痛いのかもしれません。しかし、月経痛などで受診している女性は約2割に過ぎないと言われています。問題はここにあります。



 

月経は毎月あって安心!?月経はない方が良い?!


月経痛も、内膜症も女性ホルモンに依存するものですから、症状を改善させるだけではなく、内膜症の発生予防や、病巣の縮小を期待してホルモン療法が奨められます。

治療用の低用量ピルや合成黄体ホルモン製剤が、それです。いずれも主たる作用を示すのは黄体ホルモンです。低容量ピルは毎月月経を起こすもの、数か月に一度、たまに月経を起こすものなどがあります。合成黄体ホルモン製剤は月経を止めてしまいます。


月経は毎月あるもので、それが女性の健康の一つの目安と考えていた時代があったように思います。そもそも月経は来る度に害のある現象です。痛い、漏れる、不快 …。痛くなくて、少なくて、短くて、(実は、ホルモン環境さえよければ)ない方が良い …ということです。


このホルモン療法は、大雑把に言ってしまえば、妊娠と同じようなホルモン状態をつくりだすものです。数十万年女性が慣れ親しんできた月経の少なかった時代のホルモン環境を作り出しているというわけです。


 

女性は攻めの姿勢で月経と社会に臨め


厚生労働省は昨年9月「働く女性と生理休暇について」と題する生理休暇取得に関する文書を改めて発出しました。これも勿論大事なアクションです。かといって、そんなこと毎月々月お願いできるか!それならば、こっちから積極的に攻めていこう、自分で何とかしよう、というお話です。


   (2024..1. 9掲載)













当院のモットー「Medical Support for Women」のキャラが写った当院外観。

 

うえだ・まさひろ
1956年新潟市生まれ。1980年新潟大学医学部卒業、新潟大学医学部産科婦人科学教室入局。新潟県立吉田病院,富山赤十字病院,長岡赤十字病院等にて研修の後,新潟大学医学部付属病院に勤務。86年県立吉田病院勤務。99年燕市に「うえだクリニック」開設。産婦人科専門医。

次回は、上田先生が「熱き志を持った教育者であり、医師」という日本歯科大学新潟生命歯学部の佐藤雄一郎教授を予定しています。


協力:株式会社メディレボ










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